2021年1月28日にルノー・ジャパンは、バージョンアップされた「メガーヌ R.S.」と「メガーヌ R.S.トロフィー」の国内発売開始を発表。これに伴った試乗会へ参加してきましたので、そのレポートをお届けします。

目次

「FFニュル最速」の称号は内燃機関としては永久保持か?

「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=『MOBY』より引用)

はじめに、メガーヌR.S.についての基礎知識からお伝えします。ご存知の方はお読み飛ばしを。

「メガーヌ」はフランスの自動車メーカー、ルノーのミドルクラス・ハッチバック。Cセグメントに属します。このセグメントのハッチバックでは、国産車では、ホンダ シビック、マツダ3、ドイツ車では、メルセデス・ベンツ Aクラス、BMW 1シリーズ、フォルクスワーゲン ゴルフなどが該当します。フランス車では、プジョー 308。

Cセグメント・ハッチバックでは多くのモデルがハイパワーエンジンを搭載し、足回りを固めたスポーツタイプの派生モデルをラインナップしています。このようなハッチバックを総称して俗に「ホットハッチ」と呼ばれています。

「メガーヌ R.S.」の読み方は「メガーヌ ルノー スポール」、フランス語表記は「Renault Sport」で文字通りスポーツのこと。「ルノー スポール」はルノー社のモータースポーツ部門の名称でもあります。メガーヌそのものは、ファミリーユースに始まるさまざまなシーンで快適、実用的かつフランス車らしいおしゃれな5ドア・ハッチバック。メガーヌ R.S.は、それをベースにした本気のホットハッチです。(後述しますが、本気のスポーツモデルでありながら、実に扱いやすい!)

メガーヌR.S.の最大のライバルは、シビック タイプR。シビック タイプRが「FFニュル最速」の称号を2017年4月に取ると、その2年後に、メガーヌ R.S.トロフィーが奪取します。

「ニュル」とは、ドイツ北西部にある2つのサーキットコース「ニュルブルクリンク」のこと。このうちの1つ「北コース」は全長約20kmのコース長という長いコース(日本の有名なサーキットのコース長は2〜3km前後が多い。最も長いコース長は、鈴鹿サーキットの国際レーシングコースの5.821km)、高低差300m、コーナの数172というスペック。コーナは超高速コーナーから超低速コーナーまであり、さらにバンクが付いたすり鉢状のヘアピンカーブも。加えて、コース幅が狭くエスケープゾーンも少ない上、路面は荒れたところが多く、空力性能が良くない車ではジャンプするところもある、といったとんでもないコースです。

シビック タイプRは、2021年7月で生産終了することが決定しました。シビック タイプRはイギリスのスウィンドン工場で生産されていますが、この工場は閉鎖、買収となりました。また、ホンダは今年4月1日に、2040年までに新車をすべてFVとFCV(燃料電池自動車)にする方針を発表。メガーヌ R.S.の最大のライバルが不在となります。

シビック タイプR以外にも、メルセデス・ベンツ CクラスにはAMGシリーズ、BMW 1シリーズには「M」、フォルクスワーゲン ゴルフにはGTIといったホットハッチが生産販売されていますが、全世界的な自動車電動化の波の中「ニュル最速」の称号を、今から取りにいくために開発を進めるとは考えにくいものです。ゴルフGTIが、ニュルブルクリンク北コースで良い記録を持っていますが、シビック タイプRには少し及ばないレベル。ニュル最速の称号がなくとも、十分に良いクルマですし、フォルクスワーゲン社がゴルフGTIでタイトルを取りに行くと推測するのもナンセンス。

こういった事情から、「FFニュル最速(ただし内燃機関)」の称号は、ルノー メガーヌ R.S.トロフィーが保持したままとなるでしょう。

愉しい、愉しい、たのしいコーナリング

試乗インプレッションをひとことで言えば「コーナリングが愉しい!」クルマでした。

試乗会場は、箱根ターンパイク。ここの登り坂は長く勾配もきつく、非力なクルマではアクセルをベタ踏みしてヒイこら言いながら走らないといけないところ。試乗車、メガーヌ R.S. EDCは、マイナーチェンジしてトロフィーと同じ最高出力300PS、最大トルク420N・mを発生する1.8L直噴ターボエンジンを搭載しました(前モデル比+21PS・30N・m)。車重は1.5トンを切る軽量。よく回るエンジンで走りが愉しい!

メガーヌには「4CONTROL(フォー・コントロール)」と呼ばれる四輪操舵が採用されています。R.S.では約60km/h以下の低速走行とレースモードの約100km/h以下でハンドルを切るときは、後輪を前輪とは逆の方向に向ける逆位相になり、約60km/h以上の高速走行とレースモードの約100km/h以上の走行時では、4つの車輪がすべて同じ方向に向けられる同位相の設定にされています。この四輪操舵は、まるでレールにタイヤを引っ掛けてコーナリングしているような感覚。FFと思えない安定性でコーナリングが楽しい!

前述した「レースモード」とは、メガーヌに備えるドライブモード切り替え機能「ルノー・マルチセンス」のモードの1つ。エコな走行から、攻めた走りまでドライバーの好きなように細かくセッティングができるようになっています。

さらに楽しさを加えたアイテムが、アクティブバルブ付きのスポーツエキゾースト。「ルノー・マルチセンス」のドライブモード設定で音圧レベルが変更できます。箱根ターンパイクは良い音が出るスポーツモードで走りましょう。ふもとの料金所からの長い登りは、前に車がいなければフルスロットル制限速度までどうぞ。

「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=新型ルノー メガーヌ R.S. EDC のエンジンルーム、 『MOBY』より引用)

「FFニュル最速」の称号をもつ300PSのホットハッチと聞くと、なんだか運転が難しそうに思えるかも知れません。しかし、まったくそんなことはありません。とても扱いやすく、運転が楽しいクルマです。また、乗り心地が良いことも特筆すべき。スポーツタイプのクルマは足が固くて乗り心地が悪い、というのが相場ですが、メガーヌR.S.は違います。固さがない、と言うとウソになりますが、固さよりしっかり感が強く、しなやか。ファミリーで乗ってもまぁ、だいじょうぶではないでしょうか。個人差が大きいところですが、筆者的には少なくともロングドライブしても問題なしの、良好な乗り心地と評価しています。

また、アダプティブクルーズコントロール(EDCモデルはストップ&ゴー機能付き)、アクティブ エマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)歩行者検知機能付など、先進の運転支援システムが新たに装備されたのもうれしいところ。

変更点と価格

「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=『MOBY』より引用)

そんなルノー メガーヌR.S.の新車車両価格は、今回試乗したベースモデルが464万円、トロフィーのMTが494万円、EDC(6速DCT/AT)が504万円。

ヨーロッパでは、CO2排出量が多い車は、消費者にも高い税金がかけられ、フランスではメガーヌR.S.を買う時に、120万円ほどの税金が課せられるとか。日本にもこの制度の導入を進めた方が良いとの意見が見え隠れしていますが(ここではこの制度の是非については意見しません)、日本でメガーヌR.S.がこの値段でいつまで買えるかはわかりません。

シビック タイプRが勇退したように、メガーヌR.S.の勇退も危惧されます。今回のマイナーチェンジでブラッシュアップ、熟成されたメガーヌ R.S.は買い時と言えるでしょう。

それでは、新型メガーヌR.S. EDCの外観上のわずかな変更点などの画像を並べて、本記事の結びとします。

「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=ルノーのロザンジュ(菱形)エンブレムの下に「R.S.」のネームプレートが追加。 『MOBY』より引用)
「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=LEDヘッドライトの意匠変更、『MOBY』より引用)
「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=リアコンビネーションランプの意匠変更、『MOBY』より引用)
「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=センターコンソールのエアコン調節は3つのダイヤル式に変更された。『MOBY』より引用)
「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=これまでトロフィーMT車のみが採用していた、 コーナリングスピードの向上を目的にロールを抑えたシャシー、トルセンLSD、前輪アルミ製 ハブ/鋳鉄製スリット入りブレーキディスクを装備した。『MOBY』より引用)
「FFニュル最速」の称号は永久保持か?超絶愉しい新型ルノー メガーヌR.S.EDC試乗レポ
(画像=トロフィーMT車にもローンチコントロールが追加された。画像の車両は展示車両。『MOBY』より引用)


文・撮影:宇野 智/提供元・MOBY

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