これまで発見されてきた恒星質量ブラックホール(もっとも小さいクラス)は、全て太陽質量の5倍以上でした。

しかし、オハイオ州立大学の研究チームは、地球から約1500光年という位置に、太陽質量の約3倍程度のブラックホールを発見した可能性があると報告しています。

「ユニコーン」と名付けられたこの天体は記録上、もっとも地球に近く、もっとも軽いブラックホールとなる可能性があります。

この研究は、科学雑誌『王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)』へ掲載される予定です。

目次
もっとも軽いブラックホール「ユニコーン」
最小ブラックホールの潮汐力で歪む赤色巨星

もっとも軽いブラックホール「ユニコーン」

一言でブラックホールと言っても、それは質量に応じていくつかのクラスに分類されます。

もっとも小さいクラスは恒星質量ブラックホールと呼ばれるもので、これは太陽質量の数十倍程度までのものです。

これまで発見されてきた恒星質量ブラックホールは、どれも太陽質量の5倍以上であり、これより小さいものは見つかっていません。

「もっとも小さく、もっとも地球に近いブラックホール」が見つかった?
(画像=太陽質量の5倍以下のブラックホールは見つかっていない。 / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner、『ナゾロジー』より引用)

しかし、最近報告されている研究では、5倍よりもっと小さなブラックホールが存在するはずだと指摘されています。

こうしたあるはずだけれど見つからない領域を「質量ギャップ」と呼びます。

天文学者たちは、そんな質量ギャップに収まる小さなブラックホールの探索に興味を向けていました。

ただ、ブラックホールは定義上、視覚的にも、その他の天文学者が測定する電磁波の波長においてもとても暗い天体です。

太陽質量の数百万倍という超大質量ブラックホールの場合は、降着円盤が存在するため観測が可能ですが、非常に小さいブラックホールは、それを単独で検出することはほぼ不可能に近いのです。

しかし今回、オハイオ州立大学の研究チームは、その候補となる天体を発見することに成功したのです。

それはいっかくじゅう座の方角にある赤色巨星でした。この星は、これまでにも多くのデータが収集されています。

研究チームがこの星のデータを分析したところ、星からの光の強さや見え方が、軌道上のさまざまな場所で変化していることに気が付きました。

チームはこれが、何かが赤色巨星を引っ張って、星の形を変化させているためだと考えましたが、その存在は見えませんでした。

「もっとも小さく、もっとも地球に近いブラックホール」が見つかった?
(画像=ブラックホールの潮汐力が赤色巨星を歪めているように見えた。 / Credit:Ohio State illustration by Lauren Fanfer、『ナゾロジー』より引用)

見えない何かが赤色巨星を潮汐力によって変形させているならば、その候補はブラックホールです。

しかし、その影響を見るに、ブラックホールの質量は非常に小さくなければならず、太陽質量の5倍未満である可能性があったのです。

最小ブラックホールの潮汐力で歪む赤色巨星

多くの人は、これがブラックホールである可能性を否定する理由を考えようとしました。

しかし、今回の研究の主執筆者であるオハイオ州立大学のタリンドゥ・ジャヤシンゲ氏は、これがブラックホールである可能性があるとしたらどうだろうか? と言ったのです。

もし連星の片方が先に死んでしまい、それがブラックホール化した場合、星とブラックホールの連星が誕生します。

連星の場合、伴星を観測することで、ブラックホールの存在を知ることができます。

今回の赤色巨星は、まだこれがブラックホールとの連星であるという可能性を考慮して分析されたことはありませんでした。

研究チームの1人、オハイオ州立大学天文学科の学科長であるトッド・トンプソン氏は、今回観測された状況を次のように説明しています。

「月の重力が地球の海を歪ませ、海が月に向かって膨らむことで潮の満ち引きが生じるように、ブラックホールが星を歪ませて、一方の軸が他方の軸よりも長いフットボールのような形にしているのです」

たしかにこの赤色巨星の光の見え方が変化するもっとも単純な説明は、それがブラックホールによるものだということでした。

そして、この場合、もっとも単純な説明が、もっとも可能性の高いものでした。

「もっとも小さく、もっとも地球に近いブラックホール」が見つかった?
(画像=赤色巨星はブラックホールの潮汐力で歪んでいるように見えた / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner、『ナゾロジー』より引用)

チームは赤色巨星の速度、軌道の周期、潮汐力による赤色巨星の歪み方から、もしブラックホールが存在する場合、その質量は太陽の3倍に相当すると結論づけました。

これはまさに質量ギャップを埋めるブラックホールの発見です。

この10年ほど、天文学者や宇宙物理学者たちは、非常に小さいブラックホールが見つからないのは、使っている装置やアプローチ方法が十分ではないか、もしくは単にそんなブラックホールが存在しないからだと考えていました。

しかし近年、より小さなブラックホールを探すための大規模な実験が開始されており、トンプソン氏は、「将来的に「質量ギャップ」に属するブラックホールがより多く発見されるだろう」と述べています。

「なぜなら、ブラックホールを発見するたびに、新しいブラックホールを知る手がかりが増えていくからです」

まだ、今回の発見が最小のブラックホールであると確定したわけではありません。しかし、その可能性はだいぶ高いようです。

この発見はギャップを埋める天体が、今後どんどん見つかっていくきっかけになるのかもしれません。


参考文献

Black hole is closest to Earth, among the smallest ever discovered(Ohio State News)


提供元・ナゾロジー

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