「イリジウム」という元素をご存じであろうか?

中学校では取り扱わず、高校では地学で少し取り扱う程度であるため、なかなか馴染みがないかもしれない。

まず、イリジウムとはどのような元素であるのだろうか。

イリジウムは原子番号77、元素記号Irの元素である。

1803年にイギリス人化学者のスミソン・テナントがオスミウム(*1)とともに白金の溶解残留物から発見した。

イリジウムの塩が様々な色になることから、ギリシア神話の虹の女神・イリスにちなんで命名された。

その性質として、金属の中でも特に腐食に強くて硬く、比重はオスミウムの次に高い。

白金(*2)との合金が摩耗・腐食に強いため万年筆などのペン先に、ロジウム(*3)との合金が耐熱性に優れているため自動車の点火プラグに用いられている。

イリジウムはレアメタル(希少金属)で、地球の埋蔵量が少ない。

にもかかわらず、ある特定の地層にはイリジウムが多く含まれている。

それは「K-Pg境界」という地質年代で中生代と新生代の境目となっている地層である。

この地層には、場所によっては地球表層の岩石平均値に比べて2000倍程度に達する高い濃度でイリジウムが含まれていることがある。

これは何を意味するのか?

それは、このイリジウムは地球外に由来するということである。

隕石には地球表層に比べ10000倍ものイリジウムが含まれているものもある。

このことから、中生代と新生代の境目でイリジウムを多く含む巨大隕石が地球に落下したと考えられる。

これにより、この地層にだけ本来地球に少量しか存在しないイリジウムが多く見つかったものとされる。

しかし、本当にこの時期に隕石が落ちたのか疑問に思うかもしれない。

実は隕石落下の証拠はイリジウムの量だけではない。

・中生代末期に、隕石衝突でできるマイクロテクタイト(ガラス質の微小球)や衝撃変成石英が見られる

・中生代末期に、炭素同素体比による光合成が停止していたことの判明(隕石落下による粉塵により太陽光が遮断)

・イリジウムの量などから、どこに隕石が落ちたのか調査しクレーターを発見する

→メキシコのユカタン半島地下に円形の重力異常構造が見つかり、ここで採取した試料を分析すると中生代末期の隕石衝突によるクレーターと判明

といったことが判明したため、中生代と新生代の間に隕石が落ちたものと考えられている。

そして、この隕石により恐竜などが絶滅したのでは?と考えられている。

元素について追及したら、いつの間にか地質学に…

学問とは多岐にわたるものということを実感しますね。

*1 オスミウム:原子番号76、元素記号Osの元素。比重が最も高い元素。

*2 白金:プラチナとして知られる元素。原子番号78、元素記号Pt。

*3 ロジウム:原子番号45、元素記号Rh。耐食性がありメッキなどに使われる。

文・遠藤和成/提供元・QUIZ BANG

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