コロナ禍による外出自粛の影響でEC(Eコマース)の利用が伸びているなか、ECサイトとライブ配信を融合させた「ライブコマース」が注目を集めています。

特に中国では新型コロナウイルス感染拡大前からライブコマース市場が拡大し、コロナ禍による巣ごもり需要の高まりでその成長がさらに加速しています。

この記事ではライブコマースの概要と特徴、および中国を中心とした広がり、代表的プラットフォーム、日本企業の活用事例について説明します。

目次
ライブコマースとは?コロナ禍で注目が集まる新しいECの形
 ▶︎ECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態
 ▶︎年々拡大しているライブコマース市場|中国では20兆円を突破
ライブコマースの特徴
 ▶︎1. リアルタイムで顧客の悩みを解消
 ▶︎2. コンバージョン率が高いが、返品率も高い
中国のライブコマースプラットフォーム4選
 ▶︎1. 淘宝直播(タオバオライブ)
 ▶︎2. 蘑菇街(MOGUJIE)
 ▶︎3. 抖音(ドウイン)
 ▶︎4. 快手(Kuaishou)
越境ECとしてインバウンド業界でも注目
ライブコマースがコロナ禍を経て今後の日本で注目産業に

ライブコマースとは?コロナ禍で注目が集まる新しいECの形

ライブコマースとは、インターネットでのライブ配信を活用したECの販売形態のことです。

ここではライブコマースとは何か、その市場規模について説明します。

ECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態

ライブコマースとは、ECサイトとライブ配信を組み合わせた販売形態のことです。

販売者が商品紹介をライブ配信で行い、その配信を見ている消費者が同時に商品について質問したり、商品を注文したりすることができます。

なお、ライブコマースでライブ配信をする販売者は中国では「ライバー(中国語:直播主)」と呼ばれており、メーカーやショップの店員による「自社ライバー」と、SNSで購買行動に多大な影響力を持つ人物による「KOLライバー」の2種類です。

これまではライブコマースは中国を中心に盛んでいましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり消費の台頭により、中国だけではなく、アメリカや日本などにも広がりつつあります。

年々拡大しているライブコマース市場|中国では20兆円を突破

前述したとおり、ライブコマースは中国で数年前から発展しており、その市場規模は年々拡大を続けています。

中国のテクノロジー専門メディア36krのシンクタンク「36kr Research」による「2020年中国ライブコマース業界研究レポート」は、2017年に190億人民元(約3,188億円)だった中国のライブコマース市場規模は2020年には9,610億人民元(約16兆円)に成長し、2021年には1兆2,012億元(約20兆円)に達すると予想しています。

また、中国互聯網絡信息中心(CNNIC)の「第47回中国インターネット発展状況統計報告」によれば、中国でのライブコマース利用者は2020年12月の時点で3.88億人にのぼり、中国のインターネットユーザーの39.2%を占めています。

コロナ禍によるEC需要の高まりや5Gネットワークの広がりに伴うライブ配信技術の高度化などを追い風として、今後ライブコマース市場がさらに成長するでしょう。

コロナ禍で加速する「ライブコマース」とは?代表的サービスや特徴、2021年の市場規模を予測
(画像=▲中国のライブコマース市場規模(単位:億人民元):36氪研究院より、編集部作成、『訪日ラボ』より引用)

ライブコマースの特徴

ここからはライブコマースの特徴について説明します。

1. リアルタイムで顧客の悩みを解消

EC需要は近年拡大していく一方、購入前に実際に手に取ることができないため、ECでの購入に抵抗感を持っている人がいます。

しかしライブコマースでは写真や動画だけでなく実際に商品を使っている様子も見られるので、視聴者は実店舗に近い感覚で商品を選ぶことができます。

また視聴者は商品への疑問点や具体的な使い方について、リアルタイムで販売者側に質問することができます。

こうした双方向コミュニケーションによって、視聴者は購入前に情報不足を解消でき、満足のいく購入につながりやすくなります。

さらに商品やブランドに対する認識も高まり、ファンの育成にもつながります。

2. コンバージョン率が高いが、返品率も高い

ライブコマースの視聴者は、通常のECサイトを巡回しているユーザーよりもコンバージョン率(商品購入率)が高くなる傾向があります。

視聴者が製品について詳しく知り、また親しみを持つことで、購買意欲が促進される効果があるからです。

日本人を対象とした調査ではありますが、株式会社ジャストシステムによる2019年9月の調査では、日本でライブコマースを試聴した経験のある人のうち、5割がそのまま商品を購入したことがあるという結果が出ています。

ただし、コンバージョン率が高い一方、ライブコマースでは限定商品や限定価格などのキャンペーンが行われており、機会を逃したくないという思いで衝動買いが起こっている一方、後悔して購入した商品を返品する人も少なくありません。

そのため、ライブコマースの返品率が普通のECサイトより高く、前述した36kr Researchの調査によれば、ライブコマースの平均返品率が30%〜50%で、普通のECサイトの10%〜15%を上回っています。

中国のライブコマースプラットフォーム4選

中国では、従来のECプラットフォームだけでなく、ショート動画配信プラットフォームもライブコマースに参入しています。

ここでは中国の代表的なライブコマースプラットフォームを紹介します。

1. 淘宝直播(タオバオライブ)

淘宝直播(タオバオライブ)は中国インターネット大手企業アリババグループのECプラットフォームである淘宝(タオバオ)で展開されるライブコマースです。

アリババのプレスリリースによれば、淘宝直播を経由した流通取引総額(GMV)は2020年に4,000億人民元(約7兆円)を超えています。

コロナ禍で加速する「ライブコマース」とは?代表的サービスや特徴、2021年の市場規模を予測
(画像=▲淘宝直播(タオバオライブ):編集部キャプチャ、『訪日ラボ』より引用)

2. 蘑菇街(MOGUJIE)

女性ファッションに特化したECプラットフォーム蘑菇街(MOGUJIE)では、2016年にライブコマースが開始されました。

蘑菇街が発表した2020年10月~12月の財務報告書によると、ライブコマースによる流通取引総額は前年比20.9%増の40億5,100万人民元(約680億円)となり、全体流通取引総額の80.3%を占めています。

コロナ禍で加速する「ライブコマース」とは?代表的サービスや特徴、2021年の市場規模を予測
(画像=▲蘑菇街(MOGUJIE):編集部キャプチャ、『訪日ラボ』より引用)

3. 抖音(ドウイン)

中国大手ショート動画配信プラットフォームである抖音(ドウイン、中国版TikTok)は、これまでのライブ配信機能に加え、2018年にショッピングカート機能を追加しました。

当初は視聴者をタオバオや京東など外部の商品リンクに誘導することができましたが、2020年10月から自社のECプラットフォーム「抖音小店」への出店を促進するため、ライブコマースにおける外部の紐付けができなくなりました。

抖音のEC事業は2020年の年間流通取引総額は5,000億人民元(約8兆円)を超え、2021年に1兆人民元(約17兆円)という目標を掲げています。

コロナ禍で加速する「ライブコマース」とは?代表的サービスや特徴、2021年の市場規模を予測
(画像=▲抖音(ドウイン):編集部キャプチャ、『訪日ラボ』より引用)

4. 快手(Kuaishou)

中国国内ではTiktok(抖音)と並ぶ大手ショート動画配信サービスである快手(Kuaishou)でもライブコマース機能が追加され、自社のECプラットフォーム「快手小店」以外に、淘宝など外部のECプラットフォームに遷移することも可能です。

快手経由の流通取引総額は2020年に1,771億人民元(約3兆円)にのぼり、前年比313.7%増加しました。

コロナ禍で加速する「ライブコマース」とは?代表的サービスや特徴、2021年の市場規模を予測
(画像=▲快手(クアイショウ):編集部キャプチャ、『訪日ラボ』より引用)

越境ECとしてインバウンド業界でも注目

コロナ禍で訪日旅行は制限されていますが、ライブコマースを越境ECとして活用しはじめた日本企業があり、中国向けの需要喚起や情報発信を行っています。

例えば、渋谷PARCOは2020年10月、ライブコマースアプリ「Shopshops」とタイアップし、コロナ禍で来店が難しい中国をはじめ海外の顧客向けの越境ライブコマースイベントを開催しました。

この「SHIBUYA PARCO × Shopshops SPECIAL 4 DAYS」では、インフルエンサーが渋谷PARCOの各ショップからライブ配信を実施したり、特設会場でレディスブランド7企業が合同でライブコマースイベントを開催したりしていました。

また化粧品大手の資生堂は、2020年11月11日に、中国のECサイトがこぞって大きなセールを実施することで知られる「独身の日」に中国に向けたライブコマースを行いました。

アリババの越境ECサイト「天猫国際(Tmall Global)」を利用し、インフルエンサーおよびブランド責任者、現地法人の社員が化粧品ブランド「マキアージュ」をアピールしました。

この取り組みは、中国消費者のブランドに対する認知と理解を促進し、需要喚起を図るとされています。

ライブコマースがコロナ禍を経て今後の日本で注目産業に

新型コロナウイルスによる生活習慣の変化による追い風もあり、ライブコマース市場はこれからも拡大していくことが予想されます。

販売者と視聴者の双方向コミュニケーションで購買意欲の促進ができる一方、衝動買いが原因で高い返品率も一つの特徴です。

コロナ禍で外国人旅行者の往来が難しい状況下、ライブコマースを活用し海外向けの越境ECを展開する日本のインバウンド事業者が増えています。

世界的に広まりつつあり、インバウンド集客にも活用可能なライブコマース市場の今後の動向に注視が必要でしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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