JATAらが開催した見学会では、安心・安全な乗り物を宣言するラッピングバスも都内で走行。写真は出発式(写真=トラベルジャーナルより引用)

コロナ禍で観光バス事業者が窮地に追い込まれている。昨年3月以降、移動自粛に伴いバス旅行の予約キャンセルが相次ぎ、修学旅行や部活動でのチャーター需要も消失。帝国データバンク(TDB)によると、倒産件数は20年4月から今年1月まで11件と年度ベースですでに過去最多となった。需要低迷を食い止めようと、業界団体は優れた車内の換気性能や安心・安全のアピールに努めてきたが、先行きは不透明でさらなる経営状況の悪化が懸念されている。

倒産したのは、中部観光サービス(沖縄県豊見城市)、十二天観光バス(埼玉県本庄市)、須崎観光(高知県須崎市)、あじさい観光(大阪府堺市)など。競争激化などを背景に業績が低迷していたところ、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけたケースが少なくない。また、廃業した糸島観光バス(福岡県糸島市)など休廃業や解散も増え、TDB によると20年4 ~12月に24件と過去最多を更新した。

コロナ禍はバスが密で危険といった風評ももたらした。GoToトラベルキャンペーンが開始されても利用を控える傾向が続き、効果を享受できていない。イメージの払拭に向け、JATA(日本旅行業協会)関東支部、全国旅行業協会(ANTA)東京都支部、東京バス協会は昨年10月、車内換気の実地見学会を開催した。国土交通省は感染防止対策にかかる経費の助成や資金繰り支援を講じている。

ただ、売り上げの減少幅が大きく損失の穴埋めには至っていない。TDB によると、20年度の利益動向が判明した減収企業150社の約6割が最終赤字となる見通し。同社は「先行きの悲観から事業継続を諦めるケースが増加するのでは」と懸念している。

提供元・トラベルジャーナル

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