しかし、この結果には統計的な処理で完全には確かめられていない部分(未補正)もあります。

また、細菌の種類の豊富さ(多様性)についても、蚊に刺されやすい人と刺されにくい人の間には大きな差はありませんでした。

つまり「蚊が好む肌のにおい」は、単純に一種類の細菌が多いか少ないかだけで決まるほど単純ではなく、より複雑な仕組みが関わっている可能性が高いのです。

こうした中で、参加者465人のうち、蚊がまったく寄り付かなかったのはわずかに4人だけでした。

つまり、どんなに対策をしても、「絶対に蚊に刺されない人」はほんの一握りしかいないのです。

こうした結果を踏まえ、研究者たちは「夏やアウトドアの場では、日焼け止めを持ち歩くことが賢明だろう」とアドバイスしています。

確かに蚊よけスプレーも有効ですが、日焼け止めにも蚊が嫌う成分が含まれている可能性が示唆されているため、手軽に試せる有効な予防法となるかもしれません。

しかしその一方で、いくつかの限界や注意点も見逃せません。

まず最大の特徴である「音楽フェス」という環境は、参加者が非日常のテンションに包まれているだけでなく、普段よりも衛生や生活リズムが乱れやすい状況でした。

研究チームも認めている通り、参加者の多くは“科学に関心が高い”層に偏っており、しかも測定は昼間に限定されていました。

つまり、この結果がすべての日常生活や別の季節・国・年齢層にそのまま当てはまるとは言い切れません。

また、使われた蚊の種類はアノフェレス・ステファンシィのみであり、日本で一般的なヒトスジシマカやアカイエカなど、他の種では異なる結果が出る可能性があります。

さらにアンケート調査の内容も、一部は自己申告に頼らざるをえないため、飲酒量やシャワーのタイミングなどに多少の誤差が含まれているかもしれません。

それでも本研究は「なぜ自分だけ蚊に刺されやすいのか?」という多くの人の疑問に対し、大規模かつリアルな現場で正面から迫った点はやはり画期的です。