実は、誰かと近くで寝ると、体温が高くなったり汗をかいたりして、肌から出るにおい成分が増えることがあるからです。
そして、この「肌から出るにおい」は蚊が人を見つけるときの重要な手がかりになっているのです。
アンケートの後、いよいよ実験が始まります。
研究者は特設ラボに1,700匹もの「アノフェレス属」の蚊を用意しました。
アノフェレス属は世界中に広く分布し、人をよく刺すことで知られる蚊の種類です。
実験の方法はとてもシンプルです。
まず参加者は透明な容器の横に腕を置きます。
容器には細かな穴が開いていて、蚊はその穴から出てくる「におい」や「参加者の吐く息」を手がかりにして腕に近づいてきます。
実際に刺されるわけではなく、蚊が容器の壁に腕のほうへと着地する回数を、カメラを使って正確に数えました。
これを3分間続けて測定し、「蚊に好かれやすい人」を数字で表したのです。
その結果、非常に興味深い事実が明らかになりました。
まず、ビールを飲んだ人は飲んでいない人と比べて、蚊が1.35倍も多く寄ってくることがわかりました。
不思議なことに、参加者が飲んだアルコールの量(血中アルコール濃度)そのものは、蚊の好みに直接的な影響を与えませんでした。
つまり、蚊はアルコールそのものではなく、ビール特有のにおいや、飲んだ人の肌から出る何らかの特別な物質に反応している可能性があるのです。
さらに面白いことに、前夜に誰かと一緒にテントなどで寝ていた人も、ひとりで寝ていた人に比べて約1.34倍も蚊が寄りやすいという結果が得られました。
この結果から、「誰かと寝る」という意味深な行動も、意外なほど蚊を引きつけることがわかったのです。
(※研究論文では、「ビールを飲む」ことや「誰かと寝る」という点について具体的な言及はされていませんが、代わりに「快楽主義」という表現を使用しています。)
一方で、逆に蚊を遠ざける行動も発見されました。