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NHKの土曜ドラマ『ひとりでしにたい』が話題になっている。主演の綾瀬はるかさんの快演とコメディータッチの演出で、楽しく視聴しながらも終活の重要性を実感させられる内容だ。今まで終活を意識してこなかった若い世代からも「自分の将来が不安になった」「終活をしようと思えた」とポジティブな評判が多い。
未婚率は上昇傾向だが日本のシステムは「家族」優位
近年日本では結婚を選択しない人が増えているのは周知の事実かもしれない。実際に2020年の生涯未婚率は、男性で28.3%、女性で17.8%だった。20年前の2000年は男性が12.6%、女性が5.8%だったので、この20年間で結婚をしない人の割合が増えたことがわかる。
しかし、日本は「おひとりさま」に優しくない。日本の社会制度は、原則として本人に何かあった際には、家族などの親族が対応することを前提に設計されている。孤独死とまではいかずとも、ひとりで暮らし続けるには備えておくべきことが多い。
例えば、医療や介護が必要になり、入院や入所することになれば、病院や介護施設から求められるのは家族の署名と押印だ。どんなに親しい付き合いのある友人がいても、家族代わりとして認められないこともある。最近では、医療機関によっては身元保証人がいなくても入院を受け入れるケースも増えているが、病気やケガなどで意思疎通ができなくなったときに、誰がどのように医療についての希望を伝えるのかという問題もある。
亡くなったあとのことを考えても、故人の遺産は、配偶者と直系尊属(両親・祖父母)、直系卑属(子や孫)、兄弟姉妹などが相続人となる。相続順位に応じて法定相続人が決まり、その他の人に財産を渡したい場合は、遺言などによる対策が必要だ。
このように、『ひとりでしにたい』が取り上げるテーマの1つである「おひとりさま終活」は、日本の現実的な問題とも言えるだろう。
家族がいても将来的におひとりさまになる可能性は大
しかもおひとりさま終活は、既婚者や家族がいる人も無関係ではない。「一般社団法人 終活協議会」が実施したアンケートでは、回答者の42%が子どものいる既婚者だったにもかかわらず、将来的に「おひとりさま」になる可能性を意識している人が70.7%にのぼった。 出典:一般社団法人終活協議会/想いコーポレーショングループ「『おひとりさま終活』に関する意識調査レポート」
離婚や死別の可能性もあり、既婚者であっても、いずれひとりになると思って準備を進めたほうがよい。多くの人が、将来的にひとりになる可能性を現実的なものとして認識し始めていると考えられる。