さらに研究チームは、このような現象が他にもないかを詳しく調べました。

すると、この現象は決して特別な一例だけに起きる珍しいものではなく、実際には数多くの結び目の組み合わせで同じようなことが起こり得ることを突き止めました。

つまり、「2つの絡まりをつなげると予想よりほどきやすくなる」という現象は広く存在し、決して特殊な例外ではないことが示されたのです。

こうして数学者たちが約90年間信じ続けてきた常識が、ついに覆りました。

「結び目をほどくための操作回数(ほどき数)は、2つつなげた場合には単純に足し算される」という考えが間違いだったことがはっきりと分かりました。

しかし、ここで新たな大きな疑問が生まれます。

なぜ、2つの複雑な結び目を連結すると、予想より簡単にほどけてしまったのでしょうか?

この意外な現象が起こる背後には、いったいどのような仕組みや理由が隠されているのでしょうか?

なぜ結び目は『計算通り』にほどけないのか?数学が示す新たな視点

なぜ結び目は『計算通り』にほどけないのか?数学が示す新たな視点
なぜ結び目は『計算通り』にほどけないのか?数学が示す新たな視点 / Credit:Canva

今回の研究によって、「複雑な結び目同士をつなげると、逆に簡単にほどけてしまう場合がある」ことが示されました。

この発見は数学の研究だけに留まらず、私たちの日常生活や社会に対しても興味深い示唆を与えます。

例えば、イヤホンコードや荷物の紐の絡まりを考える際にも、『複雑な絡まりは必ずしも見た目通りの難しさとは限らない』という直感を与えてくれます。

さらに、DNAの分子やタンパク質が体内でどのように絡まり合っているかという生物学的な問題や、通信やデータ管理における暗号理論、さらにはコンピューターが難問を解決するための機械学習の手法に至るまで、幅広い分野への応用も考えられます。

つまり、この研究は、私たちが結び目という現象を新たな視点から捉え直すことで、意外な発見や革新的な方法が生まれる可能性を示唆しているのです。