・一方で、成熟した防衛(ユーモア・昇華)はむしろMDを抑える保護因子
という興味深い結果が示されました。
つまり、自己愛傾向のある人が現実のストレスに適応できず、心理的にネガティブな反応をしてしまった結果、「過度な妄想の世界に逃げる」という心理的パターンを強化してしまう可能性があるということです。
このメカニズムは、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の診断基準にもある「誇大妄想的な空想」と重なっており、臨床的にも重要な示唆を与えています。

私たちは誰しも「こうありたい」という理想の自分を思い描くことがあります。
しかしその理想があまりにも現実と乖離し、空想の世界に逃げ込むようになってしまったとき、それは心のSOSかもしれません。
今回の研究は、自己愛傾向という一見「強そう」に見える性格の裏に、現実と向き合うことの難しさや自己評価の脆さが隠れていることを浮き彫りにしました。
もしあなたや身近な人が、現実よりも空想の世界に安らぎを求めるようになっていたら、その背景には、見過ごされがちな「心の不適応」が潜んでいるかもしれません。
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参考文献
Narcissistic individuals are more prone to maladaptive daydreaming
https://www.psypost.org/narcissistic-individuals-are-more-prone-to-maladaptive-daydreaming/
元論文
What Is the Relationship Between Narcissism and Maladaptive Daydreaming? The Role of Defense Mechanisms as Mediators
https://doi.org/10.1176/appi.prcp.20250018
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。