
アイリスオーヤマ(仙台市)は食品事業拡大の一環として、2022年にアジア向けにパックご飯と飲料水の輸出を開始した。24年7月には佐賀県の鳥栖工場がアジア圏全体への輸出拠点として稼働し、パックご飯などを生産している。アジア圏への食品事業進出の背景や今後の展開について、佐々木雅人食品事業部長=写真=に聞いた。
―アジアに進出した理由は。 日本で食品事業が好調ということもあり、3年ほど前からアジア現地で販売したいという声が上がっていた。22年末に本格的に輸出に取り組んでいこうとかじを切った。
―進出する上での課題と解決策は。 販売店がなかなか見つからず、お客さまの開拓に半年から1年ぐらいかかった。輸入商材の公開、展示会が各国で年1回から年2回ある。去年からそうした海外展示会に積極的に出展するようになり、そこで新しいお客さまにコンタクトする形でパックご飯を食べてもらったり、炭酸水を飲んでもらったりしている。
地道ではあるが、新しいチャンネルを開拓し、ようやく動きが出てきた。今年もそういった活動を継続して行い、日本で食べても海外で食べてもおいしい、同じ味が体験できるような試食会を組んでいきたい。最初はあまり反響はなかったが、少しずつリピートという形で手に取ってもらえるようになった。手応えを感じている。
―アジアのポテンシャルをどうみる。 非常に潜在需要は大きいと考えている。訪日客も非常に多い地域で、日本食も人気が高い。それをチャンスと捉え、進出先を増やしていきたいという思いでいる。数字としても日本の農産物の輸出は、香港や台湾も含めたアジア圏全体では米国と同規模か、それ以上というデータもある。ポテンシャルは感じており、営業を強化している段階だ。香港には現地法人がまだないが、市場規模は非常に大きいので、飲料を皮切りにパックご飯など増やしていけたらと考えている。
―中国本土は。 中国の食品事業は、今年から本格的に展開できるようになればと考えている。東京電力福島第1原発の処理水問題で輸出ができず、例えば山梨産のコメを精米して輸出することもできなかった。佐賀県の鳥栖工場が稼働し、輸出態勢は整っている。まだ認証は取れていないが、今年からできるように調整をかけている。
―中国市場に今後注力していくのか。 そうできたらありがたいが、現地でコメを作っているところが多く、販売価格の面でも日本との差が大きい国になる。この価格差がクリアできたら、チャンスは非常に大きいと思っている。
日本の10倍以上の人口を抱える非常に大きな国なので、気に入ってもらえれば大きな輸出になる。小売店とはまだ交渉していないが、どうしても価格といった面で難しい。このため、台湾、香港にもう少し頻繁に営業を仕掛けた方が、アジア圏全体で見れば売り上げが増える可能性が高い。(聞き手=仙台支社・清水実乃里) (記事提供元=時事通信社) (2025/07/14-06:00)