また、調査期間中に死亡した参加者の脳解剖による検証も行われ、卵を多く食べていた人の脳では、アルツハイマー病に特有の脳の異常(アミロイド斑やタウたんぱく質の蓄積)も少なかったことが確認されています。

つまり、卵は単に「認知症になりにくい人が食べている食品」なのではなく、実際に脳内の病変そのものを減らしている可能性があるのです。

卵の中の脳の味方「コリン」が鍵を握る?

では、なぜ卵が認知症リスクの低下と関係しているのでしょうか。

その答えは、卵に豊富に含まれる「コリン(choline)」という栄養素にあります。

コリンは、記憶や学習に関わる神経伝達物質「アセチルコリン」の材料となり、脳の神経細胞膜の構成にも重要な役割を果たしています。

今回の研究では、「卵の摂取頻度」と「コリン摂取量」、そして「認知症発症率」の関係を数理モデルで解析し、卵の保護効果の約39%はコリン摂取によって説明できることが示されました。

つまり、卵を食べることでコリンを多く摂取し、それが脳を守る一因となっているということです。

さらに卵には、オメガ3脂肪酸ルテインといった、抗炎症作用や神経保護作用があるとされる栄養素も含まれています。

これらがコリンと相乗的に働くことで、より強力な「脳のシールド」として機能しているのかもしれません。

加齢によりコリンの脳への取り込み能力は低下するため、高齢期には特に意識的な摂取が求められます。

卵は調理が簡単で食べやすく、毎日の食事に取り入れやすい点でも理想的な食品といえるでしょう。

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Credit: canva

「卵を週に2回以上食べるだけで、認知症のリスクが下がる」

そう聞くと信じがたいかもしれませんが、今回の研究はその可能性を科学的に裏づけました。

もちろん、これは因果関係を証明するものではありません。

ですが卵に含まれる栄養素が脳に良い影響を与えていることは、他の研究でも繰り返し示唆されています。