本当に性行為が睡眠薬を超えるほどの効果を持つのか、そしてその効果の詳細なメカニズムは何なのかを明らかにするためには、もっと大規模で客観的なデータを用いた調査が必要です。

では、なぜ性行為によって睡眠が改善するという結果が得られたのでしょうか?

なぜ性行為は睡眠薬に勝ったのか?

なぜ性行為は睡眠薬に勝ったのか?
なぜ性行為は睡眠薬に勝ったのか? / Credit:Canva

今回の研究によって、「性的な行為(特にオーガズムに達した場合)が睡眠薬と同じか、それ以上に睡眠の改善に役立つ可能性があること」が示されました。

では、なぜ性行為は眠りやすさにつながるのでしょうか?

その理由として専門家が注目しているのは、「ホルモン」の働きです。

実は私たちが性的な快感のピーク(オーガズム)に達するとき、脳や体内からさまざまなホルモンが一気に放出されます。

その中でも特に注目されているのが、「プロラクチン」というホルモンです。

プロラクチンは「リラックスホルモン」とも呼ばれ、強い満足感や心地よい眠気をもたらす作用があります。

実際、過去の研究では、男女とも性行為後にプロラクチンの量が普段の約4倍に増えることが確認されています。

これが、いわゆる「賢者タイム」と呼ばれる、性的興奮が収まった後の独特なリラックス状態を作り出している可能性があります。

また、オーガズムの直後には、「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンも大量に放出されます。

オキシトシンはストレスや不安を和らげ、パートナーへの愛着や安心感を高めることが知られています。

つまり、性行為のあとには、「ホルモンの癒やしカクテル」が作られているようなものなのです。

さらに興味深いのは、性的興奮が鎮まった後にはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減少するという点です。

コルチゾールが減ればストレスが軽くなり、よりスムーズに眠りに入ることができます。

一部の研究によれば、特に女性の場合、性的満足によって女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が促進され、脳がより深い休息を取るためのREM睡眠が増える可能性も指摘されています。