彼が捕まえた動物から、アメリカ国内で初となる「ジェイロングウイルス」*が発見されたのです。
まるでウイルス研究のために生まれてきたかのような愛猫の活躍に、研究者たちも舌を巻いています。
哺乳類に感染する新種ウイルス、人への影響は?
今回発見されたオルトレオウイルスは、人間を含む哺乳類や鳥類に感染するウイルス属の一種です。
1950年代から存在は知られていたものの、長らく「孤児ウイルス(orphan virus)」と呼ばれ、哺乳類に感染しても特に病気は引き起こさないものと考えられてきました。
しかし近年の研究で、小児の脳炎や髄膜炎、胃腸炎との関連が報告され始めています。
つまりこのウイルス群は、まだ十分に理解されていないが、見過ごしてはいけない存在なのです。
オルトレオウイルスは、糞便や飛沫を通じて感染し、呼吸器や消化器系に作用すると考えられています。

新株の存在自体は、ウイルスが常に進化し、新たな系統を生み出すことから、さほど驚くべきことではないとされています。
例えば、異なる2種類のウイルスが同時に1つの細胞に感染すると、遺伝子が混ざり合い、全く新しいウイルスが生まれることがあります。
「私が最初に言ったわけではありませんが、“探せば見つかる”のです。だからこそ、次々と新しいウイルスを発見し続けているのです」とレドニッキー氏は語っています。
研究者たちには、オルトレオウイルスに関してまだ多くの疑問が残っています。
たとえば、「どのくらいの頻度で人間や動物に感染しているのか」「どれほど重篤な症状を引き起こす可能性があるのか」「感染経路はどのように広がるのか」といった点です。
実際、遺伝子配列がほぼ一致するオルトレオウイルスが、アメリカのシカ、中国の養殖ミンク、そして日本のライオンから見つかっています。