人工甘味料ソルビトールは、どのようにして腸の炎症を引き起こしているのか?

この疑問への答えを得るため、研究者たちはまずマウスを用いた実験を開始しました。

マウスを2つのグループに分け、一方のグループにはソルビトールを2週間飲ませ、もう一方には普通の水を飲ませました。

その後、2つのグループのマウス両方に腸炎を引き起こす物質(デキストラン硫酸ナトリウム:DSS)を5日間投与しました。

すると、ソルビトールを飲んでいたマウスは普通の水を飲んでいたマウスに比べ、体重が大きく減り、腸の炎症もひどくなっていました。

また、炎症の強さを示す指標物質「リポカリン2」の量も顕著に増えていました。

つまり、ソルビトールが腸炎を一段と悪化させることが明らかになったのです。

では、なぜソルビトールが腸の炎症を悪化させたのでしょうか。

その鍵は腸の中に住む「腸内細菌」と、身体を守る「免疫細胞」の2つが握っていました。

ソルビトールを飲んだマウスの腸内を調べたところ、炎症を引き起こす強力な物質「IL-1β(インターロイキン1β)」が通常より多く作られていました。

さらに、免疫細胞の中でも特に炎症を引き起こすタイプ(M1型)のマクロファージが大幅に増えていたのです。

マクロファージは本来、体内の異物や細菌を掃除する役目の免疫細胞ですが、M1型は掃除の過程で激しい炎症反応を引き起こします。

ソルビトールを摂取したことで、炎症を引き起こすM1型マクロファージが増加し、腸の炎症をより悪化させていたわけです。

一方、腸内細菌の様子にも大きな変化が起こっていました。

ソルビトールを与えたマウスでは、腸内細菌の中でも特に「プレボテラ科(Prevotellaceae)」という細菌グループが非常に多く増加していたのです。

普段はそれほど数が多くないこの細菌が増えたことが炎症と何か関係あるのでしょうか?

研究者たちは次に、マウスに抗生物質を使って腸内細菌を一時的にほぼ除去した上でソルビトールを与えました。