興味深いことに、この濃度は健康な人や症状が落ち着いている寛解期の患者さんと比べて明らかに高かったのです。

つまり、「腸に炎症を抱えているときほど、腸内にソルビトールが溜まりやすい」という可能性が浮上したわけです。

しかし、これまでの研究ではソルビトールそのものが直接的に炎症を引き起こしているのか、あるいは腸内細菌や免疫システムが具体的にどのような役割を果たしているのかははっきりしていませんでした。

そこで今回、北里大学と慶應義塾大学らの研究チームは、ソルビトールが本当に腸炎を悪化させる原因なのか、そしてもしそうだとしたら、どんな仕組みで腸内細菌や免疫細胞が関わっているのかを明らかにするため、本格的な調査に取り組みました。

いったいソルビトールは、どのような経路で腸内細菌や免疫細胞に作用し、炎症を引き起こしているのでしょうか?

人工甘味料ソルビトールが腸の炎症を悪化させる衝撃の仕組みが判明

人工甘味料ソルビトールが腸の炎症を悪化させる衝撃の仕組みが判明
人工甘味料ソルビトールが腸の炎症を悪化させる衝撃の仕組みが判明 / 図は、ソルビトールが腸の炎症を悪化させるメカニズムを示しています。まず研究者たちは、実験用のマウスを2つのグループに分け、一方には普通の水、もう一方には2週間ソルビトールを含んだ水を飲ませました。その後、腸炎を誘導する物質(DSS)を投与して、その影響を観察しました。 結果として、ソルビトールを摂取していたマウスは、通常の水を飲んでいたマウスに比べて体重が顕著に減少し、腸炎の症状も明らかに悪化しました。特に、炎症が起きていることを示す指標物質である「リポカリン2(lipocalin-2)」が、ソルビトールを飲ませたマウスで大幅に増加していました。また、腸の組織を顕微鏡で詳しく観察したところ、ソルビトールを摂取したマウスの腸には、炎症に関連する免疫細胞の浸潤や組織の損傷が明確に認められました。 これらの結果は、ソルビトールが腸内環境を悪化させ、腸内の免疫細胞を刺激して強い炎症を引き起こすことを示しています。/Credit:人工甘味料が腸炎を悪化させる仕組みを解明-腸内細菌と免疫細胞が連動する新たな炎症経路を特定-