北里大学や慶應義塾大学などで行われた研究により、人工甘味料ソルビトールが腸の炎症を悪化させる仕組みが明らかになりました。
ソルビトールは低カロリー甘味料としてキャンディーやガムなど多くのシュガーレス食品に使われていますが、腸で吸収されにくく、大腸まで届いてしまう特徴があります。
研究ではマウスに与えたソルビトールが、大腸に到達すると、特定の腸内細菌を刺激し、免疫細胞たちを炎症を引き起こすタイプに代えて腸炎を悪化させていることが示されました。
私たちが普段口にしている「シュガーレス」の甘味料にはどんなリスクが潜んでいるのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年7月18日に『iScience』にて発表されました。
- 大腸まで分解されない人工甘味料が問題となっている
- 人工甘味料ソルビトールが腸の炎症を悪化させる衝撃の仕組みが判明
- 人工甘味料は敵か味方か?「腸内細菌-代謝物-免疫」の最新研究が示す未来
大腸まで分解されない人工甘味料が問題となっている
大腸まで分解されない人工甘味料が問題となっている / 人工甘味料としてよく使われるソルビトールは、低カロリーで体に優しいイメージがありますが、実は腸の中で意外な問題を引き起こすことが明らかになりました。 マウスを使った実験でソルビトールを摂取すると、腸の中に住んでいる特定の腸内細菌(特にプレボテラ科細菌)が急激に増えます。この細菌が増えると、腸内で「トリプタミン」という物質の生産が活発になります。 ここからが問題の始まりです。増えたトリプタミンは、腸の中にいる免疫細胞(マクロファージ)に働きかけて、炎症を起こしやすいタイプ(M1型)に変えてしまいます。M1型のマクロファージは本来、体を守るために働く細胞ですが、時に暴走して強い炎症反応を引き起こします。 さらに、このM1型マクロファージは強力な炎症物質である「IL-1β(インターロイキン1ベータ)」という物質を大量に放出します。IL-1βが大量に作られることで、大腸内の炎症が悪化してしまうというわけです。 つまり、ソルビトールを摂取すると: 1. 腸内のプレボテラ科などの特定細菌が増える 2. その細菌がトリプタミンを大量に作る 3. トリプタミンが免疫細胞(M1マクロファージ)を炎症型に変える 4. 炎症型になったマクロファージがIL-1βを多く産生し、腸の炎症が激しくなる という炎症の「悪循環」が生まれてしまうのです。/Credit:人工甘味料が腸炎を悪化させる仕組みを解明-腸内細菌と免疫細胞が連動する新たな炎症経路を特定-