宇宙から降り注ぐ超高エネルギーの宇宙線はしばしばニュースに上がります。
これまではそんな超高エネルギー宇宙線のほとんどは陽子(水素原子核)だと考えられていました。
しかしその常識が裏返る時が来たようです。
国際共同研究チームによって行われた最新の研究により、宇宙の謎の一つである超高エネルギー宇宙線には陽子以外のより重い元素がかなりの割合で含まれていることが明らかになりました。
研究では南極の氷の下に埋設されたニュートリノ観測施設IceCube(アイスキューブ)で約13年間にわたって得られたデータの解析が行われており、これまで広く支持されてきた「宇宙線はほぼすべて陽子である」というモデルは95%という高い信頼度で否定されたのです。
100年以上科学者たちを悩ませてきた宇宙線の正体に、ニュートリノという新たな視点で光が当てられたこの研究成果は、宇宙物理学にどのような影響をもたらすのでしょうか?
研究内容の詳細は『Physical Review Letters』にて発表予定です。
目次
- 宇宙の謎に迫る鍵は「まっすぐ飛ぶ粒子」ニュートリノだった
- 「100年の宇宙の謎」がついに解明?IceCubeが突き止めた超高エネルギー宇宙線の意外な正体
- 陽子だけではない宇宙線の主役――残された謎と次世代望遠鏡への期待
宇宙の謎に迫る鍵は「まっすぐ飛ぶ粒子」ニュートリノだった

夜空を見上げて星々の美しさや宇宙の広大さに思いを馳せたことは誰しもあるでしょう。
しかし実はその宇宙から、毎秒何十億という目に見えない粒子が私たちの体を貫いていることを知っていますか?
これらの粒子は「宇宙線」と呼ばれ、中でも最もエネルギーが高い「超高エネルギー宇宙線(UHECR)」は、想像を絶する力を秘めています。
そのエネルギーはあまりにも巨大で、たった一粒子で、私たちが普段目にしている可視光の約100京倍(10¹⁸倍)以上ものエネルギーに達することがあります。