ではオタク系の顧客のハートをどうとらえるか、ここなのですが、「オタクの深堀り状態」となっており、相当な「専門的で偏執的な内容のアートブック系」が売れるのです。100人いたら2-3人しか興味を示さないけれどその2-3人にとっては持ち金を全部はたいてでも欲しくなる商品です。日本の書店はかなりチェックしていますが、我が販売部隊の品ぞろえと同じぐらいのバラエティを持っているところは池袋のジュンク堂かアニメイトぐらいかもしれません。
そういう特殊マーケットを狙うならば確かに私どもはとんがったビジネスをしていると思います。ただ、アニメ産業全体で考えた場合、日本の若者たちが皆で推し出す力が無くなっています。私どもは韓国系や中国系の一部のアニメ作品で日本語の版権を取得し、日本語版で製本されたものを輸入販売していますが、一定数売れます。理由は製本技術が素晴らしく、一冊1万円出しても永久保存版としての価値が維持できることもあります。ただ、アニメの販売額としてはかつての100%日本アニメから7-8割ぐらいにまで下がってきており、今後、版権次第でもっと下がるとみています。
売れ行きがばらけ始めた1つの理由は言葉のハンディがあると思います。またAKBの派生グループが上海や台湾、インドネシアなどアジア各地で大活躍したことが逆にローカルマーケットの萌芽につながったとみています。
一種の文化の輸出であり、文化が現地でも芽生えたわけでこれを責めるわけにはいきません。世界で起きているのは同質化であります。同じ趣味の人たちがネットなどを通じて世界中で繋がり、それが新しい文化をどんどん生み出しています。これが上述のイベント物販で「アニメの的が絞れない」ということにつながっていくのです。
結局日本が抱えている様々なノウハウ、それこそ経済を支えてきた星の数ほどの新製品から書籍、音楽、芸術、そしてアニメまで海外に広く伝わる一方で現地で似たようなものが生まれることを防ぐことはできないのです。いや、むしろ競争が生まれ、より切磋琢磨された市場が生まれてくるのですが、日本はどの分野においても先進性があったのに多くの分野で脱落してしまったことは否めない事実です。競馬でいう先行逃げ切りは産業界ではもはや不可能に近く、日本はあらゆる方面にどういう戦略を持って対応するか、再構築が必要です。