全世界で流行が拡大し続けている新型コロナウイルスは、世界各国の経済に暗い影を落としています。

しかしその一方で、新しいライフスタイルが求められる現状がむしろ追い風となり、業績を伸ばしている産業もあります。

その代表格が国境を超えたビジネスである越境ECです。

そこで本記事では、ECビジネスの中でも近年市場規模の拡大が注目を集めている東南アジアの越境ECについて、その現状や主要国の市場の特徴について整理します。

目次

東南アジアの越境EC基本情報

東南アジアは今後経済成長が見込まれる世界の中でも有望な市場の一つです。

外務省の「目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料-(令和2年8月)」によると、東南アジアの経済成長率が堅調に推移していることが分かります。

東南アジアの国々において、越境ECの販路を拡大していくことが企業の成長につながると考えられます。

東南アジアの越境EC市場規模

Google、Temasek、Bain & Companyによる「e-Conomy SEA 2020」の発表資料によると、東南アジアのEC市場は成長が著しく、2020年の流通取引総額(GMV)は620億米ドル(約6兆5,736億円)となり、2019年の380億米ドル(約4兆290億円)から63%増加しています。

また、同発表では2025年までに東南アジアのEC市場は1,720億ドル(約18兆2,365億円)にのぼると予測されています。

▲[東南アジアにおけるEC市場のGMV推移]:Google「e-Conomy SEA 2020」
(写真=訪日ラボより引用)

さらに、Googleが発表した「e-Conomy SEA 2020 report」によると、東南アジアのインターネットユーザー数は、2015年に2億6,000万人であったのに対し、2020年には4億人となり、5年間で1.5倍増加していることがわかります。

同レポートでは、コロナ禍で消費のデジタル化が加速していることにより、2020年のインターネットユーザーが前年より4,000万人と急増したと述べています。

▲[東南アジアにおけるインターネットユーザー数の推移]:Google「e-Conomy SEA 2020」
(写真=訪日ラボより引用)

また、経済産業省の「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査) 報告書」によると、EC市場規模に占める越境ECの割合は、東南アジア各国の中ではマレーシアが54%で最も高く、次にタイが38%、シンガポールが23%となっています。

以上のことから、今後東南アジアの越境EC市場はさらなる成長を見せるでしょう。

東南アジア越境EC市場で人気の日本商品とは?

BEENOS株式会社が発表した「BEENOS 越境EC 世界ヒットランキング 2020」によると、東南アジアでは日本ブランドへの信頼が厚く、バイクやカーパーツや時計といった高品質なアイテムが人気となっています。

上述したランキングより、東南アジアでヒットしている日本発の商品の人気トップ5は、以下となります。

順位 商品カテゴリ
1位 おもちゃ、ゲーム
2位 ファッション
3位 自転車、オートバイ
4位 アクセサリー、時計
5位 スポーツ、レジャー
「BEENOS 越境EC 世界ヒットランキング 2020」より、訪日ラボ編集部作成

また伸び率では、下記3商品は2020年に成長を見せていました。

順位 商品カテゴリ
1位 音楽
2位 アクセサリー、時計
3位 ファッション
「BEENOS 越境EC 世界ヒットランキング 2020」より、訪日ラボ編集部作成

2020年は新型コロナウイルスの影響が消費行動にも色濃く反映された結果、東南アジアにおいてもいわゆる「巣ごもり需要」が伸びています。

そのため日本発の商品については従来人気があったアニメ、ゲームといったコンテンツ商品以外に、家の中で快適に過ごすための日常生活にまつわる品々についても、EC経由で日本製品を購入する傾向が顕著だったと同社は指摘しています。

東南アジアのEC市場に進出する際の注意点

上述したように成長著しい東南アジアのEC市場は、ECビジネスを手がける企業にとって魅力ある市場といえます。

しかし実際に進出するにあたっては、国際ビジネス特有の障壁も少なくありません。

東南アジアのEC市場に進出する際の主な注意点としては、3つの点が挙げられます。

1. 関税や禁制品について

現在、東南アジアはASEANとして一つの大きな経済圏を構築しています。

しかし一方で、国ごとに文化も法制度もバラバラで、万国郵便条約が定める禁制品だけではなく、国独自のルールに基づく禁制品を設けている場合もあり、特に関税と禁制品については各国の事情を十分に確認する必要があります。

2. 支払い方法について

東南アジア各国では銀行口座の保有率が低く、 世界銀行が2017年に発表した「Global Findex Database」によれば、東南アジア主要9か国の中ではシンガポール、マレーシア、タイを除く6か国では、銀行口座保有率が5割を下回っている状況です。

また、ほとんどの国ではクレジットカードが普及しておらず、シンガポール、マレーシア以外の7か国の保有率は10%を下回ります。

このような国々への越境ECに参入する際には、決済方法としてATMや窓口を通じての銀行での振込決済や代金引換、コンビニ払いといった現金を使用する方法も用意しておく必要があるでしょう。

3. 各国の文化や特性に合った商品展開をする

東南アジア各国は多民族国家の国も多く、国ごとに宗教人口の分布も異なります。

例えば、マレーシアやインドネシアでは人口の多くがイスラム教徒で、ハラールにより食品や服装などにおいて日本とは異なるルールが存在します。

このような宗教や文化の相違にきめ細かく対応した商品を展開することが求められます。

東南アジアで人気のECプラットフォーム

We are soicalの「DIGITAL 2019: LEADING ONLINE RETAILERS IN SOUTHEAST ASIA」によると、東南アジアでよく利用されているECプラットフォームとして、Shopee、Lazadaとtokopediaの3つがあると述べています。

ここでは、この3つのプラットフォームの特徴について説明します。

Shopee

▲[Shopee シンガポール 公式ウェブサイト]:訪日ラボ編集部キャプチャ
(写真=訪日ラボより引用)

Shopee(ショッピー)は、シンガポール発のECプラットフォームです。

2021年現在シンガポール以外ではインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンの東南アジアの諸国に台湾、ブラジルを加えて、8か国に進出しています。

Shopeeの公式サイトによれば、アプリダウンロード数は2億回を超えており、2018年の流通取引総額(GMV)は103億米ドル(約1兆90億円)以上を超えています。

Shopeeでは、日本との越境ECは手数料がかかりません。また、出品の翻訳とカスタマー支援の多言語対応も行っています。

Lazada

▲[Lazada インドネシア 公式ウェブサイト]:編集部キャプチャ
(写真=訪日ラボより引用)

Lazadaは2011年に設立され、2016年に中国Eコマース最大手のアリババ・グループの傘下企業になりました。
Lazadaの公式サイトによれば、2020年6月30日時点の月間アクティブユーザーは1億人を超えており、2019年7月31日~2020年7月31日の年間アクティブコンシューマー(実際にLazadaで購入したことあるがあるユーザー)は8,000万人を突破しました。

出店の特徴には、1つの契約でインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6か国向けのマーケットに同時掲載されることがあげられます。

Tokopedia

▲[Tokopedia 公式ウェブサイト]:訪日ラボ編集部キャプチャ
(写真=訪日ラボより引用)

Tokopedia(トコペディア)は主にインドネシア市場向けのECプラットフォームです。

上述した「DIGITAL 2019: LEADING ONLINE RETAILERS IN SOUTHEAST ASIA」によると、上記2つのプラットフォームに比べて、インドネシア以外の東南アジアではユーザー数が少ないですが、インドネシアでは最大級のECプラットフォームとなっています。

Tokopediaの公式サイトでは、月間ユーザー数は約1億人で、1,000万以上の出品者数がいるとされています。

現時点、Tokopediaは現地法人からの出品が必須となっているため、出品するためには日本での代理業者に委任しなければなりません。

東南アジア主要国のEC市場の特徴

東南アジア諸国でも、本記事ではインターネットユーザーの多さやEC市場規模の大きさから、特にシンガポール、インドネシア、マレーシアを取り上げます。

ここでは3か国のEC市場の現状を解説します。

シンガポール

市場データなどの統計調査を行うドイツのStatistaがまとめたシンガポールのEC事情によると、2020年時点で約570万人の人口を抱えるシンガポールにおける2021年のEC市場のユーザーは330万人で、収益は27億9,300万米ドルに到達すると予測されています。

人口の少ないシンガポール市場が、ECの成長市場として注目を集める理由に、シンガポールのインターネットユーザーの多さがあげられます。

We Are Socialが発表したDigital 2020によると、2020年1月時点でシンガポールのインターネットユーザーは約514万人となっており、人口の約9割を占めています。

さらにデジタルバンキングの浸透率は98%、スマートフォン普及率は95%と、ネット環境やデジタルバンキングの浸透率の高さがうかがえます。

このような背景から、シンガポールではECが身近なものとなっており、多くの人がECを利用しています。

インドネシア

2019年のインドネシア政府の統計によると、インドネシアは総人口が約2.67億人で、マレー系を中心におよそ300種族が共存する多民族国家です。

StatistaがまとめたインドネシアのEC事情によると、2021年の同国のECユーザーは約1億5,860万人と予測されています。

さらにDigital 2020によると、2020年1月時点でインドネシアのインターネットユーザーは約1億7,540万人で、2019年から2,500万人増加しています。

ユーザーの増加に伴いオンライン販売取引の伸びも堅調で、中央統計局(BPS)によれば、新型コロナウイルスによる影響もあり、2020年4月にはオンライン販売取引が2020年1月と比べて480%増加しています。

これらのデータから、インドネシアではさらなるEC市場規模の拡大が予想されるでしょう。

マレーシア

JETROの発表によるとマレーシアは立憲君主制国家で、人口は2019年時点で3,258万人です。

Statistaの発表では、マレーシアのEC場は2021年には55億4,000万米ドル(約5,848億円)となり、ユーザー数は1,400万にのぼるとされています。

またDigital 2020によると、2020年1月時点でのマレーシアのインターネットユーザー数は約2,669万で、2019年から90万人以上増加しています。

このような急速なインターネットの普及を背景に、マレーシアにおけるEC市場も順調に拡大を続けています。

国ごとの特徴を理解し、東南アジアに越境EC進出を

東南アジアは、経済規模の拡大を背景に、経済成長に対する期待が高まっているエリアです。

EC市場に関しても、年々高い成長率で拡大を続けており、これから先、さらなるスマートフォンやインターネットの普及に伴って成長が見込まれています。

また、新型コロナウイルスの影響で、渡航制限が実施されている中、ECの利用者数は増え続けていると考えられます。

企業が東南アジアの越境ECに参入する場合、東南アジアは国ごとに民族や宗教、商習慣が違うため、それらに適応したサービスを行う必要があります。

その際に、多言語・多国家に対応している人気ECプラットホームなどを活用することで、ビジネスの成功につながると考えられます。

<参考>

  • Google:e-CONOMY SEA 2020

  • We are social:Digital 2020:SINGAPORE

  • statistia:eCommerce Singapore

  • statistia:eCommerce Indonesia

  • statistia:eCommerce Malaysia

  • 外務省:目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料-

  • 経済産業省:平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査) 報告書

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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