●この記事のポイント ・スーパーホテル、23年度の売上高は前期比約18%増の481億円で過去最高を更新 ・2人1組でホテルを丸ごと1棟を運営しながら経営ノウハウと資金を獲得できる「Super Dream Project(ベンチャー支配人制度)」 ・コロナ禍での地道な取り組みが現在の強みにつながった

 スーパーホテルの業績拡大が止まらない。2023年度の売上高は前期比約18%増の481億円で過去最高を更新。コロナ前の2019年度と比較して約1.4倍の水準であり、店舗数も約1.2倍の170以上にまで増えている。その背景には、宿泊業界が一斉に苦境に陥ったコロナ禍の下で地道に推進した施策が花を開いたことがあるようだ。また、同社は経営者としてパートナーと2人1組でホテルを丸ごと1棟を運営しながら経営ノウハウと資金を獲得できる「Super Dream Project(ベンチャー支配人制度)」というユニークな制度を導入しており、数年で約2000万円ほど貯蓄するケースも珍しくないが、同制度によって生まれた数多くのイノベーションが同社の成長を支えているという。スーパーホテルの強さの秘密を取材した。

●目次

コロナ禍でのさまざまな改善・改革

「まず、インバウンド需要の増加によりホテル業界全体の経営環境が好転していることが背景にあります。弊社に関しては、コロナ禍で稼働率が低迷する中、我々が抱える課題も新たに明確になり、改善・改革ができたことは大きな成果でした。例えば、弊社にはラウンジがあり、そこで朝食を無料(一部店舗を除く)で提供しているのですが、そのラウンジが朝食時以外は活用されておらず、デッドスペースになっていました。コロナ禍でお客様も外食しにくい状況もあり、ラウンジで楽しんでいただけるサービスを提供したいと考え、ウェルカムバーを展開しました。カクテルやワイン、ウイスキーなどのお酒、ノンアルコールを20~30種類ほど無料で提供し、お客様は自由に食べ物を持ち込んで楽しむことができるというサービスを始めました。現在では9割近くの店舗で導入しており、スーパーホテルの強みの一つとなっています」

 こう語るのは、スーパーホテル経営品質本部の星山氏だ。コロナ禍では他にもさまざまな取り組みを行ったという。

「稼働率が20~30%にまで落ち込む中、アルバイトを含むスタッフの雇用を守るために、もう一度、ホテルが立地する地域の魅力を再発見して、需要が戻った時にお客様にしっかりと地域の魅力を伝え、地域を活性化していくことを目的にして生まれたのが『ご当地結びスタ』です。私どもは『泊食分離』といいましてレストランを設けていないのですが、一見すると弱みだと捉えられがちですが、逆にこれを強みにしようということで、地域の飲食店さまと提携して、お店で使えるお食事クーポンをお客様に提供するサービスを始めました。コロナ禍で飲食店の皆様も非常に大きな打撃を受けていたなか、お客様にとってもお好きなものを出来立てで召し上がっていただくのが一番と考えたこの取り組みは現在も継続しており、お客様に喜んでいただいております。お食事クーポン分だけで累計で約11億円分を地域に還元してまいりました。

 このほか、コロナで新たな需要というのも生まれました。従来は平日のビジネス利用がメインでしたが、女性お一人での宿泊、いわゆる “ビジホ飲み”が増えました。ストレス解消とリラックスを目的に、スーパーホテルの温泉やウェルカムバーを楽しまれる女性のお客様が増え、現在でも定着しております」(星山氏)