中国の都市は、人口や経済レベルなどのさまざまな観点から、「一線都市」「新一線都市」「二線都市」「三線都市」「四線都市」「五線都市」の6つの階級に分けられています。

現在、6つの階級のうち三線都市以下の「下沈市場」の成長がめざましく、大都市との経済レベルの差も徐々に縮まってきているという状況にあります。

このことから、これまで北京や上海といった一線・二線都市からの訪日客が多かったインバウンドにおいても、今後は下沈市場からの訪日客も増加する可能性があると考えられます。

この記事では、中国の都市階級について、それぞれの階級における特徴から下沈市場の成長の背景やインバウンド対策について整理します。

目次
中国における都市階級の区分
 6つの都市階級とは
それぞれの都市階級の位置づけと消費者特徴
 一線・新一線都市:世界的企業が集まる大都市
 二線都市:地域トップの地方都市
 三線都市以下:新たな市場として注目される
成長する「下沈市場」のインバウンドにおける可能性
 GDPとEC利用者が急増:下沈市場はどれぐらい成長している?
 下沈市場が成長している理由:ネット人口の増加と都市部人口の減少
 訪日できない今、下沈市場への越境ECがカギになる?
中国の都市階級の特徴を理解してインバウンド対策に活かす

中国における都市階級の区分

中国では、中国の経済情報に特化したメディアグループ「第一財経」が定めた指標に沿って、全337都市を一線から五線までの6つの階級に区分しています。

まずは都市がどのような観点で区分されているのか、それぞれの階級の代表的な都市について紹介します。

6つの都市階級とは

中国でビジネス情報を発信するメディアグループ「第一財経」は、2020年5月に「都市商業魅力度ランキング」を発表しました。

このランキングでは、商業的な資源の集約度やハブとして機能性、市民の活発さ、ライフスタイルの多様性、将来性などいくつかの指標から、337都市を「一線都市」「新一線都市」「二線都市」「三線都市」「四線都市」「五線都市」の6つのランクに分けています。

都市階級とそれぞれの主なる都市は、以下の通りです。

都市階級(区分される都市の数) 主なる都市
一線都市(4) 北京、上海、広州、深圳
新一線都市(15) 武漢、重慶、杭州、成都など
二線都市(30) 昆明、寧波、福州、厦門など
三線都市(70) 洛陽、揚州、桂林など
四線都市(90) 吉林、西寧など
五線都市(128) 海南、張家界など

第一財経より、訪日ラボ編集部作成

それぞれの都市階級の位置づけと消費者特徴

この都市階級によって社会的な位置づけが異なり、またそこに住む人たちの消費動向も異なります。

ここでは、都市階級ごとの位置づけとその消費者特徴を解説します。

一線・新一線都市:世界的企業が集まる大都市

一線と新一線都市は、主に沿岸部に位置しています。

街自体も大きく発展しており、中国のなかでも商業が盛んなうえ、国際的な都市として発達しています。

米大手コンサルティング企業のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が発表した2020年「世界で最も革新的な企業50社」で上位にランクインした中国企業の本社は、すべて一級ないし新一級都市に集まっています。

▲2020年世界で最も革新的な企業50社:BCG「The Most Innovative Companies 2020 : The Serial Innovation Imperative」より(写真=訪日ラボより引用)

たとえば、6位のファーウェイと14位のテンセントは一線都市の深圳、7位のアリババは新一線都市の杭州、24位のシャオミと31位の京東は一線都市の北京にあります。

一線・新一線都市の人々の特徴として経済力が高く、消費意欲も旺盛であることがあげられます。それに伴い、海外旅行に出かける人も多くいます。

中国旅游研究院および中国の大手オンライン旅行会社「携程」(Trip.comグループ:2019年10月まで、中国国内では「Ctrip」の名称で展開)の「2018年中国游客出境游大数据报告(2018年中国旅行者の海外旅行ビッグデータレポート)」では、2018年の海外旅行者数上位20都市のうちに、16都市は一線・新一線都市であり、年に約100万人から200万人が海外旅行に出かけていることがわかっています。

また、一線・新一線都市に住む人々、とくに女性の間でソーシャルコマースアプリ「小紅書(RED)」が人気です。

小紅書のデータ分析ツール「千瓜数据」が発表した「2020年小红书双十一行业投放报告(2020年小紅書ダブルイレブンレポート)」によれば、小紅書ユーザーの56%が一線都市在住であることがわかりました。

二線都市:地域トップの地方都市

二線都市は、一線都市、新一線都市と比較すると影響力は低い都市ですが、地域ではトップの「地方都市」です。

例えば、中国内陸部に位置する雲南省の中心地である昆明や、浙江省の杭州に次ぐ副都市である寧波が二線都市にあたります。

二線都市は、一線・新一線都市には劣るものの潜在的な消費能力を秘めていますが、住民の世代によって、消費の価値観が異なっています。

中国のリサーチ会社である艾瑞咨詢が発表した「2019二线城市新中产消费趋势报告(2019年二線都市新中産階級の消費動向レポート)」によれば、特に、1990年代以降に生まれた人たちは、経済的プレッシャーが少なく、将来について楽観的な傾向にあります。

また、このような人たちは商品の値段よりも品質を重視する傾向にあるため、高級品への投資も惜しまない傾向にあります。

三線都市以下:新たな市場として注目される

三線都市は経済規模が比較的大きい地方の中小都市を指しており、国際的影響力がほぼありません。

四線都市・五線都市は、水道や電気などの基礎インフラが整えていますが、三線都市に比べれば劣ります。

また、四線都市・五線都市は山や川、田園など豊かな自然に囲まれています。

これらの三線都市以下は、まとめて「下沈市場(シャアチェンシーチャン)」と呼ばれています。

なお「下沈市場」の定義はさまざまで、三線都市~五線都市を指す場合もあれば、三線都市のみを指す場合もあります。

下沈市場は後述した人口の多さや成長率の高さから、今後成長が見込まれる市場として注目を集めています。

成長する「下沈市場」のインバウンドにおける可能性

中国国内でも注目を集めている下沈市場は、今後数年で日本への観光客が増加すると考えられている市場の1つでもあります。

そこで、なぜいま下沈市場が注目されているのか、インバウンド対策において気をつけるべきことを解説します。

GDPとEC利用者が急増:下沈市場はどれぐらい成長している?

下沈市場ではGDPや社会消費財小売売上高の伸び率が高く、またECの利用者も増加傾向にあります。

艾瑞咨詢によると、2015年から2019年の4年間における各都市階級別でのGDP成長率では、四・五線都市が最も高いことがわかります。

例えば、2019年における一・二線都市のGDP成長率が5.6%であるのに対し、四・五線都市は10.6%と約2倍のスピードで成長しています。

また同調査によると、2019年の社会消費財小売売上高においては、四・五線都市の合計は三線都市より高くなっており、一・二線都市との差は1兆4,300億元(約23兆3,698億円)まで縮まってきています。

▲2015年-2019年中国の各都市階級の社会消費財小売売上高と伸び率推移:艾瑞咨詢「四五线城市下沉环境初探(四・五線都市の下沈環境の初歩的研究)」より(写真=訪日ラボより引用)

また、アリババの2019年度アニュアルレポートでは、EC事業のタオバオ(淘宝)が2018年から2019年の1年間で獲得した新規ユーザー1億人のうち、70%以上は下沈市場のユーザーが占めていたことが報告されています。

下沈市場が成長している理由:ネット人口の増加と都市部人口の減少

下沈市場の成長の1つ目の理由に、人口の多さとスマートフォンの普及があります。

一線都市から二線都市までの大都市の人口は約3.9億人である一方、下沈市場の人口は約10億人とされています。

また、中国ITサービス会社MobTechによると、下沈市場における2019年3月の時点のインターネットユーザーの数は6.7億人に達し、この数は中国国内のインターネットユーザーの52.9%と約半数を占めています。

2つ目の理由は、都市市場の飽和と少子化の加速にあります。

北京と上海の大都市では、インターネットユーザー数の伸び率は頭打ちになっており、全体に占める割合をみると2018年が13%、2019年には微増するも15%にとどまっています。

そして、中国では少子化が始まっており、これからの経済の発展を支える人口ボーナスが消失することが懸念されています。

このような背景から、人口が多くこれからの成長の余地がある下沈市場が注目を集めています。

訪日できない今、下沈市場への越境ECがカギになる?

新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンド市場が激減した一方で、海外から物を買う越境ECは大きく成長しています。

中国海関(税関)総署が2020年7月に発表した2020年上半期(1~6月)における貿易実績では、越境ECの取引額が26.2%増加したことがわかっています。

このことからも、今できる中国へのインバウンド対策として越境EC市場への参入の必要性が高まっていることがわかります。

その中でも、成長がめざましくインターネットユーザーとECユーザーも増加している下沈市場をターゲットとしてアプローチすることで、今後の継続的な顧客獲得につながる可能性があると考えられます。

中国の都市階級の特徴を理解してインバウンド対策に活かす

中国では、経済レベル・人口・役割などの観点から、都市が一線から五線の6つの階級で分けられています。

現在、インターネットユーザーの増加や人口の多さなどを背景とし、三線都市以下の「下沈市場」の成長が顕著であり、中国国内と海外のビジネスにおいて注目を集めています。

それは、日本におけるインバウンド対策においても同様であり、日本企業は越境ECなどを通して下沈市場に参入することで、新たな中国市場の開拓につながる可能性があります。

下沈市場には、顔なじみを大切にする文化や、価格感度が高い、娯楽・暇つぶしを好むなどの特徴があり、このような特徴を抑えたプロモーション活動を実施することが、インバウンド対策の成功に繋がると考えられるでしょう。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

【関連記事】
【独自】GoTo「良い影響ある」96.7% 、菅首相に「インバウンド期待」72.5% 海外向け情報発信の適切な時期と内容は:インバウンド対策意識調査
仏・Japan Expo創立者に聞いた、日本の魅力の「ニューウェーブ」とは?【訪日ラボ独占インタビュー】
外国人に大人気「アキバフクロウ」に実際に行ってわかった、「体験」へのこだわりとインバウンド対策の秘訣とは
インバウンド業界は「第三のフェーズ」へ-より戦略に精緻さ求められる時代に
【日中比較】新型コロナで売れた・売れない商品ランキング 「口紅」明暗分かれる