■「80時間の固定残業代」は違法でないか?
「固定残業代」とは支給される給与に「予め含まれた残業代」を指し、「◯◯時間残業したとみなして支払われる残業代」と考えると理解しやすいだろう。
もちろん「固定残業代」の時間を超過して残業が発生した場合、企業は残業代を別途支払う必要があり、例えば「20時間分の固定残業代」を導入している企業で25時間の残業を行なった場合、5時間の残業代が発生する。
つまり「21時間以上」の残業が発生しない限り(追加の)残業代は発生しないが、残業時間が発生しない(0時間)場合でも固定残業代は満額支払われる、ということだ。
…と、ここで疑問に感じるのが「固定残業代に上限となる時間は存在するのか」という点である。時間外労働に関する「36協定」では、原則として時間外労働の上限を「月45時間、年360時間まで」と規定しているためだ。
そもそも前提として「毎月45時間残業をすること」が規定に抵触しており(45時間×12ヶ月=540時間となるため)、360時間を12ヶ月で割った「30時間の固定残業」すら、既に怪しい印象を受ける。
こうした「残業時間の上限値」を知る人からすると、今回のTOKYO BASEによる「80時間の固定残業代」は、恐ろしく異質な数字に映ったのだろう。
そこで、労働基準局監督課に確認をとったところ、意外なことに担当者からは「固定残業代の上限となる時間設定は、特に設けられておりません」という回答が得られたのだ。
「残業時間」というのは「実働時間としての残業」が発生した際に計算されるもので、残業したと「みなして」支払われる固定残業代自体に、時間の制限は設けられていないという。
担当者は「もちろん、80時間以上の残業が前提となっていたり、強要させる職場環境であれば問題があるため、改善する必要があります」とも補足している。