米メジャーリーグ・大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース)の専属通訳だった水原一平氏が、大谷選手の口座から違法な賭け屋に対して450万ドル(約6億8000万円)を送金していたとして、ドジャースを解雇されたことが大きな波紋を呼んでいる。今後、どのような処罰を受けるのだろうか。

 AP通信によると、日本の国税庁にあたるアメリカIRS(内国歳入庁)は、違法賭博の疑いで水原氏と賭け屋に対する捜査を始めていることを認めたという。また、スポーツ専門チャンネルのESPNによると、当初水原氏は賭博で抱えた借金について大谷選手に相談し、肩代わりしてもらったと告白していたというが、現在は発言を翻し、大谷選手は一切関与していないと説明していると報じられている。つまり、水原氏は大谷選手の口座から勝手に送金していたことになる。

 水原氏が違法賭博を行い多額の借金を抱えたことは、多くのメディアが一致して報じているところであるが、問題は大谷選手がどの程度まで水原氏の行動を認知していたかだ。仮に、当初の説明のように水原氏の借金の肩代わりをしていた場合、大谷選手も間接的に賭博に関与したとして、メジャーリーグから処罰を受ける恐れがあるためだ。そこで、大谷選手に累が及ぶことを避けるために、水原氏が窃盗した形にしたのではないかと勘繰る報道もある。

 詳細は米司法当局の捜査を待たなければならないところだが、仮に大谷選手が水原氏の借金に一切関与しておらず、水原氏が大谷選手の口座を操作して勝手に送金していたとすると、窃盗もしくは横領ということになる。その場合、水原氏は今後、どのように処罰されることになるのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように分析する。

「一平さんが大谷さんの金銭を勝手に使った、送金された、違法な賭博をやった、といった報道がありますが、まだまだ不確かなところがあるので、今後、アメリカ国内でどのような捜査がなされ、何罪で逮捕・起訴されるかはまったくわかりません」

 では、仮に大谷選手と水原氏が日本に帰国した際に大谷選手が提訴すると、日本で刑事事件化される可能性はあるのだろうか。

「刑法は、『日本人が、海外で窃盗や横領をした場合も、日本の刑法を適用する(罰する)』と定めているので、もし、一平さんになんらかの財産犯が成立するなら、日本において逮捕・起訴があり得ます。しかし、外国で逮捕・起訴され、受刑したような場合、その後、帰国後に日本でも処罰されることはされるのですが、たいていの場合、減刑されたり免除されたりします。このため、『どうせ減刑、免除される』として、警察や検察はそもそも逮捕・起訴しない場合が多いといわれています」

 他方、違法賭博について、処罰される可能性はあるのだろうか。

「日本人が海外でカジノで遊んでも、日本で処罰されることはありません。海外では合法の国もあるので当たり前です。もし処罰されるなら、私は20回以上逮捕されています。したがって、日本に帰国した場合に逮捕・起訴されることはありません。一平さんには、あまりにも美談が多いので、今回の報道はとてもとても残念です。大谷さんのプレーに影響があるのも、とてもとても残念です。13年前からの大谷さんファンです」

 水原氏は開幕戦の後、ドジャースナインの前で自身が解雇されることや違法賭博に関する報道が出ることを告げ、「すべては自分の責任だ。自分はギャンブル依存症だ」と謝罪したという。海外ではギャンブル依存症について、行政機関と医療機関のほか民間団体なども協力して治療にあたる体制を構築している国も増えている。今後の捜査からも目が離せないが、水原氏のギャンブル依存症の行く末も気になるところだ。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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