仕事に早く着手することで得られる絶大な安心感
仕事を同時進行で進めるメリットはまだある。それは抱えている仕事に早く着手することで、その仕事の見通し(全体像)が早い段階で見えるようになることだ。
仕事というものは実際に取り組んでみないとどれだけ時間がかかるか、どれだけの労力がかかるかイメージできないことが多い。
たとえば仕事でレポートを書くことになったとしよう。ネットでのリサーチに30分、資料を読むのに1時間、レポートを仕上げるのに2時間、全部で4時間もあれば十分と考えたとする。
しかしいざリサーチをはじめると、思うようなデータが出てこない。ようやくリサーチを終えて資料を読みはじめると、思っていた以上に難しい。さらにレポートを仕上げるために別の資料を読まなければいけないことが判明する。
けっきょく4時間の予定が8時間かかってしまう。こうした経験をしたことは誰でもあるはずだ。このように仕事は実際に取りかかってみないと全体像が見えてこない。
仕事の見通しが早い段階で見えない問題点はいくつかある。ひとつは自分が抱えている仕事が締め切りまでに無事終わるのか、常に不安がつきまとうことだ。
長時間労働をしていた頃、私は毎日「仕事が爆発してしまったらどうしよう」という不安に苛まれていた。たくさんの仕事を抱えていたが、当時は同時進行で仕事を進めるという発想がなかった。その大半が未着手の状態だった。
そうすると「このペースで毎日働いていて、無事全ての仕事を締め切りまでに終わらせることができるのだろうか」という不安が払拭できない。自分が抱えている仕事の見通し・全体像が全く想像できなかったからだ。
私がわかっていたことはただひとつ。とにかくたくさん、やらなければいけない仕事がある。それだけだった。不安でしかたなかった私にできることは限界まで毎日長時間働くことだった。
しかし30分仕事術を実践すれば、当時の私の悩みは簡単に解決することができる。複数の仕事を毎日30分ずつ同時進行で進めていけば、未着手の仕事がなくなっていく。先にも書いた通り、仕事は着手すればその仕事にかかるであろう時間や労力が想像できるようになる。手に入るのは安心感だ。
君は以前と比べて自分の仕事をコントロールできている感覚を味わうことができる。少なくとも以前のように目の前の仕事に取り組みながら「あの仕事はまだ全然手をつけられてないけど、期日までに終わらせられるかな」などと思わずにすむ。あらゆる仕事も着手さえできていれば、期日までに終わりそうか想像できるようになるからだ。
昔の私のように、あの仕事は締め切りまでに間に合うだろうかなどと心配している状態では目の前の仕事に100%集中することもできない。当然、仕事の生産性は低下する。30分仕事術を実践すれば、常に仕事をコントロールでき、不安は限りなくゼロに近づく。目の前の仕事に100%集中できるようになる。
時間ロスをなくし最短ルートで仕事を仕上げる方法仕事に早く着手するメリットは、不安を払拭できることだけに留まらない。仕事の段取りがよくなり、最短ルートで仕事を終えられるようになる。
たとえば私が会社で社外の人も含めた勉強会の企画・立案を任されたとしよう。開催は準備もそれなりにかかるので、半年後くらいと言われた。その場合、今の私ならはじめの30分で次のように作業を書き出すことからはじめる。
① 勉強会の内容・構成を考える ② 上司から①を承認してもらう ③ 当日発表してもらう人物にプレゼンの準備を依頼する ④ 出席者のスケジュールを確認して日程を決める ⑤ 会議室を確保する ⑥ 日程の詳細を案内する ⑦ 懇親会の店を予約する ⑧ 懇親会の乾杯と終わりの挨拶をお願いする人物に依頼する
長期間にわたる仕事ほど、手順や段取りを整理・検討してから取り組むことが大切だ。そうしないと大抵の場合回り道をして時間を大幅にロスすることになるからだ。
同じタスクでも、昔の私なら「まず日程を決めないと」と焦りながら関係者の日程調整からはじめただろう。その結果……。
日程調整を終えて、勉強会の企画を上司と詰めた後で数人の社外関係者にプレゼンを依頼する必要があることに気づく。あわてて依頼すると「準備に1カ月以上はかかるから、そのスケジュールではとても間に合いませんね」と言われた。さぁ、どうする?
なんとか調整して、社内外の参加者に確認も取れて案内まで終えた。あとは会議室を確保するだけ。だが空いてない! さぁ、どうする?
同僚のおかげで会議室問題もクリア。勉強会も無事終了し、懇親会に。だが直前になって、重鎮の列席者に乾杯の挨拶を頼んでおくのを忘れていたことに気がつく。さぁ、どうする?
極端な例だと思うかもしれない。だが昔の私はこれに似たような経験を何度かしたことがある。
仕事を効率よく進めるためには段取りを事前に整理・検討しておくことが極めて重要だ。同じ仕事でも作業に取り組む順番を間違うと時間ロス(時には大ダメージ)につながる。
仕事に早く着手して最初に段取りを整理する習慣をもつことができれば、時間ロスのリスクを格段に減らし、最短ルートで仕事を仕上げられるようになるのだ。
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滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月28日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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