ただ、マインドは足を引っ張る
しかし、一方でデメリットもある。それはマインドだ。実際、経営者やフリーとサラリーマンとでは「真逆」といっていいほどマインドは違うのだ。
いくつかあるのだが、たとえばその1つが「チーム戦と個人戦」である。サラリーマンはチームワーク力が求められる。自分一人、突き抜けた技術や実力があってもそれを評価するのはクライアントではなく直属の上司である。つまり、上司に認められなければせっかくの技術や実力はないも当然になる。
一方で起業すると個人戦になる。従業員を雇って経営者になる場合でも、意思決定やマネジメントは自分ひとりで考えて決断する必要があり、社長業はどこまでいっても個人戦の性質に近い。不安だからと従業員とみんなで仲良く一緒に決めるようでは会社ごと沈む。社長と従業員では価値観が真逆に違うからだ。時には従業員に反対されたプランでも、長期的展望で合理性があるなら嫌われる勇気を持って押し通す強さも必要なのだ。そのため、ワークスタイルやマインドがサラリーマンに最適化されすぎた場合、なかなかそこから起業家マインドへ転換することは難しい場合がある。
また、起業すると仕事を作り、サラリーマンは仕事をもらう立場という違いも大きい。サラリーマンは会社にいけば、上から仕事が降ってくる。自ら仕事を作らなくても「仕事がなくて困る」ということは基本的にはない(ある会社も存在するが例外だ)。
だが起業すると自分で仕事を作らないとやることが何もない。時折、受け身で仕事を誰かからもらうことに慣れすぎた経営者を見ることがある。彼らがやっていることは少数の取引先からの仕事の下請け。取引先から安定的に仕事をもらうためにペコペコ気を使う。立場は社長なのに実質的に仕事をくれる取引先の部下のようになっているケースだ。実質的にサラリーマンとは何も変わらず、それでいて生殺与奪を取引先に握られている。これでは起業とサラリーマンの「悪いところどり」のような状態に近いだろう。
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起業とサラリーマンはワークスタイルや立場は違うが、仕事をするという点では全く同じ。どこまでいっても必ず対人関係が発生するし、価値を提供するというビジネスの本質がある。だからサラリーマン経験はムダではなく、起業後も活用できるものは最大限使い倒せばいいのだ。
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