黒坂岳央です。

SNSを見ていると元サラリーマンで起業して経営者やフリーになった人で「将来、起業したい人はサラリーマンせず今すぐやれ。サラリーマンなんてやるメリットはなにもない」と主張する人を結構見る。本当だろうか?

自分自身、結構長い間サラリーマンをやった後に起業したが、サラリーマン経験はムダではないと思っている。だが一方で必要ないと思うものもある。この記事で論考したい。

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役に立つサラリーマン経験

サラリーマンで起業の原資や生活基盤を作ることができる、といった金銭的メリットはさておき、まずはスキルや経験、実績面でメリットを考えたい。

1つ目はビジネスコミュニケーションである。サラリーマンでも起業でもビジネスコミュニケーションやマナーは基本中の基本だ。この基本をサラリーマンで身につける価値は大きい。それを実感するエピソードを紹介しよう。

自分は仕事の外注をすることがあるが、過去一度も会社やバイトで働いたことがないフリーランサーにあたることがあり、一部でビジネスマナーや言葉遣いが難しいと感じる人がいる。自分も全然完璧などとはいえない人間なのであまりえらそうなことは言えないのだが、ZOOMの待ち合わせをすっぽかしたり、敬語ではなくタメ口だったり、納期を守らなかったり、要件定義や指示書をまったく読まないなど基本的なことができないのだ。スキルや技術以前にビジネスコミュニケーションが取れないと仕事は難しいが、サラリーマンはここを徹底的に教育してもらえる。

2つ目は技術やスキルだ。通常、専門スキルを身につける上ではお金を払って教わるか、独習するしかない。しかし、サラリーマンになれば給与をもらって実践で練習させてもらえる。会社によっては研修やOJTまであり、まさに至れり尽くせりである。

3つ目は実績だ。起業するとそれまでの勤務先のネームバリューは一切使えず、自分自身の看板の信用力だけで戦うことになる。しかし、働いたことがないフリーランサーに積極的に仕事をまわしたいと考える人は世の中多くない。だが、サラリーマンの実績があるならそれは起業後にも光り輝くことになる。たとえば自社で会計事務所を立ち上げる際に、試験だけは合格したがまったく実績がない人と「税理士として20年の豊富なキャリア」という人とでは信用力が全く違う。

サラリーマンでえたスキルや実績は、起業後にも持ち越せるしむしろ使えるものは全部使うつもりでできるだけ持ち越すべきなのだ。