黒坂岳央です。
「人にばっかり頼らず、自分の頭で考えろ」
こうした意見をよく見る。確かに自信がなく、すべての決断、判断を他人任せで自分でまったく考えない人がいるのは事実だ。そういう人ほど、他人の判断ミスに怒り出し「どう責任取ってくれる!」といったりする。基本は自分の頭で考えるべきだし、それで失敗しても後学となる経験が蓄積するのでまったくのムダにはならないはずだ。
しかし、すべての局面が自分の頭で考えていいことばかりではない。場合によっては自分で考えてはいけない時もあると思っている。
余裕がない時
1つ目は心や時間に余裕がないタイミングである。そうした時、人は極端に思考力が落ち、しばしば誤った判断をしてしまいがちだ。
その最大の特徴に「目先の苦痛を取り除くために、長期的な利益を放り出す」というものがある。たとえば新卒で入ったばかりの会社の仕事に、プレッシャーを感じている場合などである。最初はどんな仕事でも慣れていないので心理的負担が大きいものだ。当然、誰しも余裕がなくなってしまう。
そうした局面で自分の頭であれこれ悩みだすと「目先の苦しいこの仕事をやめてから改めて今後の進路を考えよう」といった決断をやりがちだ。もちろん、それがうまくワークすることはある一方、勇み足で転職して待遇面で不利になり、「せめて仕事に慣れて余裕を得たタイミングで決断すればよかった」と後悔することもあるだろう。余裕がなければ客観性を失う、客観性がなければ視野狭窄に陥り、長期的展望を無視して短期的で感情的な判断を優先させてしまう。
現時点で精神的に余裕がない場合、自分の頭であれこれ考えずに時には第3者である他人のアドバイスを受けることも大事だろう。または「今は自己判断してはいけないタイミングだ」と精神的余裕を得るまで結論を保留にする。嵐が過ぎ去った後なら「自分は小さなことで思い悩んでいたんだな」と針小棒大に考えていた自分を客観視できるのではないだろうか。