さて、本日のFOMCは当初予想通りの政策変更なしです。生で記者会見を見ていましたが、パウエル議長はいつも以上にニュートラルであまり金利引き下げに抑制的なトーンではなかったとみています。大統領選を意識したかな、という気もしました。FOMCの24年末の予想は4.60%ですので年内3回の利下げが見込まれています。
最大のポイントは物価高がどこで沈静してくるのかです。この数か月、想定より物価の沈静化が停滞したことでFRBが利下げ時期の判断に躊躇が見られることが市場の最大の暗雲であります。
数日前に発表になったカナダの2月のインフレ率は2.8%と想定を下回る結果、また英国も3.4%で2年5か月ぶりの低さとなっています。欧米のインフレ率はほぼ同調するはずですが、アメリカのインフレ率は2月に3.2%と想定より高く昨年の7月の3.0%を底にこびりつく感じから脱却できていません。ただ、他国がインフレの下落トレンドを維持している中でアメリカだけがこびりつく十分な理由が存在しないように見え、個人的には5月発表の4月分統計あたりで2%台に落ちるのではないかとみています。
アメリカの政策金利は昨年8月に5.5%にして以降、変わっていませんが、5.5%という金利水準が「かなり強い薬を常習」している状態でそろそろ弱い薬にすべきところが怖くてできなくなっているように見受けられるのです。つまり日本がマイナス金利という集中治療室に入っていたのと同様、アメリカも高金利という集中治療室から出られない状況に感じるのです。
私はアメリカのこの高金利政策はマグマをため込んだ状態にあるとみています。つまり、潜在需要がたまりすぎて金利を下げる過程において需要爆発を起こすリスクが生まれつつあり、逆に利下げの障害になるかもしれません。本来であればアメリカも「普通の金利」水準まで落としながら「経済を抑制的に調整する」べきだと思うのです。ではどの水準なら妥当か、と言えば物価水準が3%程度なら金利は4.0-4.5%程度でよいとみています。
逆に日本はもう少し、需要を喚起したいので「金利を緩和的に調整する」となっていますが、0.50%ぐらいまでは上げても耐性はあるとみています。
我々の目には触れませんが、中央銀行の政策決定者には各方面から辛辣なコメントが矢のように飛んできています。それに刺さらないよう注意深く政策を決定するスタイルは以前よりはるかにコンサバティブになったとも言えます。ところが実体経済はそれよりももう少し跳ねたりするわけでいっそのこと、中銀の政策決定こそAIの判断のほうがすっきりできるのではないか、という気すら致します。
日米両国とも(欧州もカナダも含め)私は「普通の国」にはまだ一歩及んでいないと感じています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月21日の記事より転載させていただきました。
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