ちなみに、イスラエル軍は28日、「パレスチナ避難所の火災状況を分析すると、イスラエルの空爆で発生した火災を上回る火災が生じている。避難所の地下に保管されていたハマスの弾薬倉庫が空爆で爆発して大火災が生じ、その結果多くのパレスチナ避難民が犠牲となったのではないか」と分析している。昨年10月17日のガザ区のアルアハリ・アラブ病院爆発を思い出してほしい。ハマスはイスラエル軍との戦闘では常にパレスチナ人を人間の盾に利用してきた。ハマスにとってパレスチナ住民の犠牲が多いほど、都合がいいのだ。

現在、193カ国の国連加盟国のうち145カ国がパレスチナ国家を承認している。欧州連合(EU)の27カ国の加盟国のうち、スウェーデン、キプロス、ハンガリー、チェコ、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、ブルガリアはパレスチナ国家を承認済みだ。日本を含む先進首脳会議(G7)の7か国は未承認だ。

ノルウェー、アイルランド、スペイン3国は、今回の決定でパレスチナ自治区ガザの戦闘終結に向けてイスラエルに圧力をかけ、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平実現を促す契機となり、他の諸国にも国家承認へと動かす契機となると期待している。実際、マルタは検討中で、スロベニアは30日にもパレスチナの国家承認を発表するものと予想されている。

スペインのペドロ・サンチェス首相は「今回の決定はイスラエルとパレスチナ人が平和を築く助けとなることを目的としたものだ。イスラエルを敵とするものではない」と指摘し、パレスチナの国境問題については「マドリードの立場は国連安全保障理事会の決議とEUの伝統的な立場に完全に一致している」と述べた。具体的に、1967年の六日戦争前の国境を認めるという。ヨルダン川西岸地区とガザ地区は回廊で結ばれ、東エルサレムを首都とし、自治政府の合法的な政府の下に統一されるというわけだ。

過去、「オスロ合意」の舞台となったノルウェーは過去30年間余り、パレスチナ国家の擁護者だった。ノルウェーのエスペン・バース・エイデ外相は「他の国がノルウェーの例に続けば、和平解決により大きな勢いを与えることができる。二国家解決が平和への唯一の道だ」と述べている(「『オスロ合意』30年と関係者の証言」2023年9月13日参考)。

繰り返すが、イスラエル軍とハマスの戦闘が続いている時、欧州3国のパレスチナ国家承認発表はその意図は別として、ハマスにとって大きな‘戦果’として受け取られるだろう。残念なことだが、現在はパレスチナ国家承認の時ではないのだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年5月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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