パレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム過激テロ組織「ハマス」が昨年10月7日、イスラエルに侵入し、奇襲テロで1200人以上のイスラエル人を虐殺、250人余りを人質にしてから7カ月以上が経過した。イスラエル側はその直後、ハマスに報復攻撃を開始し、イスラエル軍とハマス間の戦闘が続いてきた。人質はまだ「ハマス」のテロリストの手にある一方、ガザ戦闘でハマスの盾に利用されたパレスチナ住民3万5000人以上が犠牲となっている。
ガザ戦闘への国際社会の反応は、戦闘開始直後はハマスの奇襲テロを受けたイスラエルへの理解があったが、パレスチナ住民に多くの犠牲が出てきたことから、イスラエルへの批判が高まり、イスラエル側の即戦闘停止を求める声が聞かれてきた。子供、女性、患者たちの悲惨な姿を映像で見てきた国際社会では当然、イスラエル側への非難が高まってきた。その頂点はイスラエルのネタニヤフ首相への国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状請求だろう。ここにきて、ハマスの奇襲テロへのイスラエルの報復攻撃といった構図は完全に消滅し、軍事力の強いイスラエル軍の脆弱なパレスチナ人への戦争犯罪行為、強者の弱者への一方的な攻撃といった構図に変質していった。これは新しい現象ではない。イスラエルと中東諸国間のこれまでの戦闘は最後にはそのような構図に落ち着く。正義、公平の結果といったものではないのだ。
なぜ、上記の事をここで書いたかというと、ノルウェー、アイルランド、スペインの欧州3カ国が28日、パレスチナを国家承認すると発表したからだ。再度、明確にガザ戦闘の経緯を想起しなければならないと考えるからだ。
欧州3国のパレスチナ国家承認は、「パレスチナ国家をイスラエルとの和平合意の一部としてのみ承認する」という西側諸国の長年の姿勢から明らかに逸脱している。イスラエルが欧州3国のパレスチナ国家承認に対し、「ハマスのテロへの報酬だ」として激しく非難したのは当然だ。ハマスの「10月7日奇襲テロ」から始まった今回のガザ戦闘がパレスチナ国家承認という成果をパレスチナとハマス側にもたらしているからだ。換言すれば、ガザ最南部ラファへの攻撃を開始したイスラエルへの懲罰といった意味合いすら出てくるのだ。
イスラエル軍の圧倒的な軍事力の前に壊滅寸前のハマス側は「われわれはイスラエルに戦争では勝てないが、国際社会の外交舞台では勝利した」と豪語するかもしれない。ガザ最南部ラファのパレスチナ避難所へのイスラエルの空爆で少なくとも45人のパレスチナ人が犠牲となったと報じられ、その画像は世界に大きな衝撃を投じたばかりだ。