ロシアに対するリスク要因の認識は、ほぼすべての国で低下し、ドイツは7番目、イタリアは12番目に下がっている。国民がロシアを最大の安全保障上のリスクと認識しているのは英国と日本の2カ国だけだ。昨年はG7の5カ国も「ロシアのリスク」という認識を共有していた。

ちなみに、日本の場合、ミュンヘン安全保障指数1位は「ロシアのリスク」で74点、第2位は「中国のリスク」73点、そして第3は「サイバー攻撃」72点となっている。ドイツの場合、国民は昨年の調査ではロシアを最大のリスクとして挙げたが、今年に入り、ロシアの脅威は7番目に急落。隣国フランスと同様に、移民やイスラム過激主義に対するリスク認識が大幅に高まった。カナダ、イタリア、ブラジルでは、人々が異常気象と森林火災を最も懸念している。中国と米国ではサイバー攻撃が最優先事項となっている。

参考までに、2月12日に発表された「ミュンヘン安全保障報告書2024」は、「地政学的な緊張が高まり、経済の不確実性が高まる中、多くの政府はもはや世界協力の絶対的な利益に焦点を当てておらず、他国に比べて得られる利益が少ないのではないかとの懸念を強めている。相対的な見返りを優先することは、「負け・負け」の関係(Lose-Lose)に拍車をかける可能性があり、協力を危険にさらす」と警告している。

地政学的な紛争は、資本と貿易の交流に支障をもたらし、地球温暖化との戦いも失敗する恐れが生じ、テクノロジーの進歩が悪用されるケースが増える。その結果、世界は進歩と、その結果として生じる繁栄の機会を制限し、人工知能(AI)などに必要な世界的な規制も妨げることになる。要するに、「国際社会は現在、ルールに基づく秩序を改革しようと努める代わりに、逆の方向に進んでいる」というのだ。

いずれにしても、「ロシア・リスク」への認識の減少は危険信号だろう。同時に、世界が他の多くのリスク要因に直面していることを示している。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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