ロシアとウクライナ間の戦争は今月24日で2年目を迎える。戦いは長期戦の模様を呈し、双方の消耗戦となってきた。軍事大国ロシアの侵略に危機感を持った欧州諸国はこれまでキーウへ武器を供与するなど支援を続けてきたが、戦争疲れ、支援疲れが欧米諸国の中にも見られ出した。それを裏付けるように、欧州の盟主ドイツの国民はプーチン大統領よりも中東・北アフリカから殺到する移民をはるかに恐れているという調査結果が報じられた。

「ミュンヘン安全保障報告書2024」(MSC公式サイトから)

第60回ミュンヘン安全保障会議(MSC)が今月16日から18日までバイエルン州の州都ミュンヘンで世界各地から国家元首、政府首脳、軍事問題専門家などを招いて開かれる。MSCはスイスの世界経済フォーラム(通称ダボス会議)の安全保障版と受け取られ、毎年、ドイツ南部のミュンヘンで参加者が世界の紛争防止、安全保障問題などについて話し合う。メディア報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加するという。

そのMSCが会議開催前に実施した調査によると、ウクライナ戦争は依然続いているが、ドイツや他のG7主要国でロシアに対する危機意識は減少しつつあることが明らかになった。ドイツ人は現在、ロシアの攻撃ではなく、別のことをもっと恐れている。移民問題だ。

ドイツは米国に次いで世界2位の移民流入国で、連邦統計局によると2023年の全人口(約8470万人)のうち移民(2021年段階で約2230万人)が占める割合は年々増加していることから、移民の殺到はドイツ国民にとって最も深刻な脅威と受け取られてきている。移民・難民問題で強制送還など強硬政策を主張する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が国民の支持を集めている理由でもある。

ロシア軍がウクライナ東部に侵攻し、首都キーウ制圧に乗り出した時、「欧州の地で再び戦争が始まった」として欧州の国民は大きな衝撃を受けた。第3次世界大戦が始まった、という声すら聞かれた。戦争はまる2年目を迎えようとしているが、ドイツを含め欧米諸国のウクライナ戦争に関する国民の関心が薄れてきている。換言すれば、西側諸国における「ロシアの脅威」が低下してきている。これは今月12日に発表された「ミュンヘン安全保障指数2024」(Munich Security Index 2024)で明らかになった。「ロシアの脅威」に代わって、移民問題、サイバー攻撃、地球温暖化、イスラム過激主義などが再び最大リスクとして認識されるようになっているのだ。

調査はG7加盟国、ロシアを除く本来のBRICS諸国(ブラジル、インド、中国、南アフリカ)とウクライナの計12カ国、1万2000人を対象に「何を最大のリスクと見ているか」を聞いた。調査期間は2023年10月24日から11月16日まで。