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ロシアのウクライナ侵攻の原因や帰結をめぐっては、さまざまな分析や見解がさまざまな媒体に発表されています。戦争と平和を実証的に研究する論文を掲載する専門誌にも、ウクライナ戦争の原因を究明する手堅い論考が発表されるようになってきました。

たとえば、若手の政治学者であるブラッドレー・スミス氏(バンダービルト大学)は、『紛争管理と平和研究』誌において、「コミットメント問題」(国家が約束を遵守するかどうかの問題)の観点から、この戦争の原因を以下のように説明しています。

交渉は、衰退する国家が、将来的に弱い立場から取引するよりも、強い立場から戦う方が望ましいと考え、即座に軍事行動を選択することで決裂し得る。重要なのは、この論理を侵攻前夜のプーチンの計算と結びつけることだ。プーチンは、ウクライナがいつかNATO(北大西洋条約機構)の一員になることを予期して、将来の交渉力が低下すると考えていたのだろう。プーチンは、NATOが自分の意志をウクライナに武力行使で押しつけられなくなってしまう未来を恐れ、現在の軍事作戦を最も有利な選択だと考えたのかもしれない。

要するに、ウクライナ戦争はプーチンとNATOの主要な指導者がバーゲニング、すなわち、ウクライナのNATO加盟をめぐり、さまざまな交渉や駆け引きを行ったにもかかわらず、それが解決策に結びつくことなく決裂した結果であるということです。

こうした分析は一定の説得力を持っていますが、ウクライナ戦争の原因をめぐる議論が依然として収斂しない1つの決定的な論点は、それがプーチン大統領という個人の属性に帰することができるのか、それともロシアを取り巻く国際環境の変化がプーチンを戦争へと促したのか、ということです。

前者は、プーチンが「帝国主義者」であり、旧ソ連帝国の再来を目指す「失地回復主義者」であると見なします。だから、NATO拡大といった外的要因は、戦争の原因ではないと退けられます。

他方、大半のリアリストは、ウクライナ戦争を典型的な「予防戦争」であると判断しています。すなわち、NATO拡大によりウクライナが西側の「防波堤」に組み入れられることが、ロシアの生存を脅かした結果、プーチンは、そうなることを「予防」するためにウクライナ侵攻に踏み切ったということです。