8月のAZEC閣僚会議に先立ち、AZECをサポートするために設立された民間レベルの賢人会議AZEC Advocacy Groupが開催された。

大きな方向性としての脱炭素化や省エネ、再エネの推進等の点は先進国と共有する一方、欧米主導のJETP(Just Energy Transition Partnership)は石炭火力のフェーズアウトにのみ焦点をあてている、アジア諸国の脱炭素化は各国の実情を踏まえたものであるべきであり、化石燃料を排除する欧米的なスタンダードを押し付けるべきではない等のコメントも多く聞かれた。

「化石燃料を使って豊かになってきた先進国がこれから経済発展をする新興国、途上国の化石燃料利用や化石燃料インフラを制約するのはダブルスタンダードではないか」とのフラストレーションがうかがわれる。

その意味で石炭から天然ガスへの燃料転換、アンモニアと石炭の混焼、天然ガスと水素の混焼、CCUSさらには原子力も幅広くスコープに入れたAZECは、アジア各国の実情を踏まえた現実的なエネルギー転換のプラットフォームたり得るものである。

その際、最も重要なのはAZEC閣僚会議のみならず、COP等の場でアジア諸国自身が「多様な道筋」の必要性について声をあげることである。筆者自身の経験に照らしても、アジアにおいて開催されるエネルギー関連の会議では持続可能性と並んで、むしろそれ以上に、エネルギーの安定供給確保とエネルギーコストの低廉さ(affordability)が強調される。

2050年全球カーボンニュートラルからバックキャストし、化石燃料を排除するCOPにおけるエネルギー転換論と大きく異なる。AZECが世界のエネルギー動向に大きな影響を与えるアジア諸国の声の発信源となり、COPを含む国際的な議論が現実的なものになることを期待したい。

日本への期待と求められるリーダーシップ

最後にAZECを主導する日本に一つ注文したい。AZEC閣僚声明では「我々はCOP28でのコンセンサスを歓迎し、グローバル・ ストックテイク(GST)に関する決定に沿った努力を加速することにコミットする。我々は、1.5℃の道筋に整合する形で、温室効果ガスの排出量を大幅に、迅速かつ持続的に削減することが緊急に必要であることを認識する」と書かれている。