温暖化問題を解決するためにはG7をはじめとする先進国のみならず、中国、インド等の新興国、発展途上国を含めたグローバルな取り組みが必要である。経済が成熟し、今後、少子高齢化が進む先進国と、これから経済も人口も増大する発展途上国ではエネルギー転換の絵姿も当然に違う。
例えば成長著しいアジア諸国においては、急増する電力需要に対応するため、大量の石炭火力が設置されてきた。インドの石炭火力の61%、東南アジアの石炭火力の63%は建設後10年未満の若いプラントである。石炭火力のプラント年齢が40年以上のものが大部分を占める欧米諸国と違って、直ちにフェーズアウトできるはずはない。だからこそ石炭とアンモニアあるいはバイオマスの混焼等によって発電電力量当たりのCO2排出量を下げていくことが現実的な道筋になる。
日本はアジアに位置する唯一のG7諸国として、ややもすれば欧米スタンダードを押し付ける傾向のあるエネルギー転換論議において、アジアの実情をも踏まえた「多様な道筋」を主張したのである。AZEC構想もそうした問題意識の中から生まれてきた。
しかしながら「多様な道筋」という考え方は再生可能エネルギー、省エネルギーを最重要視する環境団体からは評判が悪い。昨年のCOP28では、AZEC構想を通じてアジア地域の脱炭素化に貢献するとの岸田総理のスピーチを理由に国際環境NGOが日本に化石賞を授与した。
その理由は「岸田首相はAZECを通じて、水素とアンモニアの混焼技術を使って石炭・ガス発電所を稼働させ続けるよう、東南アジアに売り込みを行っている。化石燃料ベースのエネルギーを固定化しようとする動きは、化石燃料から自然エネルギーへの移行を遅らせ、自然エネルギーを3倍にするという世界的な目標達成への障害となる」というものであった。2050年全球カーボンニュートラルをすべてに優先する発想であり、アジアのエネルギーの現実から乖離したものであることは論をまたない。
アジアの実情を考慮したエネルギー転換の必要性