参考までに、同国でほぼ全ての国民がカトリック信者だった時代は過ぎ去った。聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、教会への信頼は失われてきた。同国ではヨハネ・パウロ2世は絶対的な英雄だったが、その神話は崩れてきている。カトリック教会の敬虔な信者で、保守的な愛国主義者を支持基盤とするPiSにとって、教会の影響力の低下は、即、支持率の低下となって跳ね返ってきているわけだ。

ロシア軍の侵略を受けるウクライナを支援することでは与野党の間には大きな相違はなかったが、ロシアがウクライナ産穀物の黒海経由での輸出にストップをかけて以来、安価なウクライナ産穀物がポーランド市場に流れ、ポーランドの農民たちがウクライナ産穀物の流入に反対した。そのため、政府は支持基盤の農民たちの苦情を配慮し、ウクライナ産穀物の取引禁止策を取らざるを得なくなってきたことから、ポーランドとウクライナ間で不協和音が流れている。

ちなみに、ポーランドのPiS政権はハンガリーのオルバン政権と同様、EUとは対立を繰り返してきた。ブリュッセルとしては、親EU派のトゥスク氏が勝利して、政権交代が実現することを願っていることは間違いないだろう。いずれにしても、PiSは第1党をキープしても単独ではもはや政権を樹立できないため、連立パートナーが必要となる。その際、極右政党「コンフェデラツィア」が有力候補と見られている。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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