遺体を冷凍した“ディープフリーズ殺人”
発見時の遺体には奇妙な点が多々あった。仰向けになり行儀よく胸の上で手を組んでいたアンはまるで昼寝をしているようで、しばらくしたら目覚めて起き上がってくるような様相すらあったが、衣服はボタンの掛け違えなどがあり若干不自然で、どうやら一度脱いだ服をほかの誰かが着せたようだった。また、メガネのかけかたも自分でかけたようには見えなかった。
遺体の近くにはアンの財布が落ちており、財布から落ちたのか何枚かのコインも散らばっていた。
そして何よりも不思議なのは、アンの遺体が非常によく保存されていたことだ。検死の結果、アンは首を絞められて殺された可能性があり、また性交を行った形跡もあった。胃の内容物を調べたところ、彼女が失踪当日に口にした食物が消化されずに残っていたため、誘拐された直後に死亡したと判断されたのである。
しかし、遺体の“鮮度”は到底1カ月が経過したようには見えず、ここに運ばれてくる前にしばらく冷凍されていたのだと結論づけられたのである。
当時はまだ冷蔵庫や冷凍庫はあまり普及しておらず、ましてや人体をまるごと冷凍できるサイズの冷凍庫などきわめてレアなものであった。
警察は犯罪現場から半径30マイル以内にあるすべての冷凍庫の所有者や施設を調べたが、事件に関係するような情報は何も得られなかった。
遺体が発見された現場は一番近い道路から274メートル(300ヤード)も離れており、それなりに重量のある遺体をどうしてそれほどの距離運んだのかについても謎が膨らんだ。
事件はマスコミでも大きく取り上げられ、遺体を冷凍保存していた形跡があることから「ディープフリーズ殺人(The Deep Freeze Murder)」と呼ばれ、イギリス国内で起こった最も不可解な事件の1つと見なされることになった。
警察による綿密な聞き込み調査で、1月30日に遺体が発見された場所から最も近い道路に大型の黒い車が停まっているのを見たと主張する目撃証言など、疑わしいと思われる報告がいくつか出てきたのだが、いずれもそれ以上の進展はなかった。
殺人事件としての証拠があまりにも得られないこともあってか、死因は絞殺であると最初に結論づけた検死官は前言を撤回し、感情的な興奮または重度の精神的緊張による急性の「自然的原因による窒息」で死亡した可能性が高いという見解に訂正することになった。確かにアンの首には絞められてできる内出血のアザなどは皆無であったのだ。
考えられ得る新たなストーリーは、彼女がおそらく誰かに誘拐され、性的暴行を受け、ある時点で偶然に死亡した後、犯人がパニックに陥り、遺体を冷凍したというものであった。しかし犯人はなぜ冷凍した遺体をここに運んできたのかについて検証すると、その理由はまったく見出せなかった。死体遺棄であれば、もっと山奥や川などに遺棄しそうなものである。
結局、この事件を取り巻く無数の疑問に対する答えはなく、誰一人容疑を疑われることなく未解決事件となっている。ひょっとするとアンのスイスでの寄宿舎学校時代の人間関係に謎を解く鍵があるのかもしれないが、アン本人のほかにその詳しい事情を知る者はいないのだろう。この65年も前の未解決事件に新たな展開が訪れる日が来るのか、期待するのはきわめて難しいと言わざるを得ない。
参考:「Mysterious Universe」ほか
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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