2年ぐらい前に台湾危機が起こるとすればいつか、という話題を振りました。その際に私の予想は2024年前半と申し上げたかと思います。理由は台湾総統選の後でアメリカが大統領選挙で外交的に動きづらいから、というのが主たる理由でした。あの時から台湾をめぐる情勢は多少は変わってきているのでその当時の意見は今では無効だと思っていますが、それでも別の意味で今年の中国は嫌だな、という気がしています。
一般的に国家の指導者は何かうまくいかない政策があれば国民の目線を変える為に違うことにフォーカスすることがよくあります。不人気のブッシュ大統領(当時)がイラク戦争に突き進んだ時、支持率は70%を超える状態になりました。プーチン大統領のウクライナ侵攻も国内経済情勢の行き詰まりもあり、目先をそらす意味もあったでしょう。イスラエルのネタニヤフ首相は首相を降りれば逮捕が待っているかもしれないという話もあります。もともと収賄や背任で検察が待ち構えているとされ、自身の政策に国内からの反発も多い中で今のハマスせん滅作戦は保身的意味もあるでしょう。
国家の指導者の保身という点から考えれば習近平氏は現在の世界の指導者では筆頭候補の一人です。国内経済が上向かず、不動産のしがらみは重くのしかかります。同じ不動産処理問題で日本は90年代にゼネコンやデベロッパー、金融機関がその重みから解放されるまで概ね10年強かかっています。しかもそれは倒産が資本主義的に実行される日本での話です。
中国の場合、企業を倒産させるかどうかは国家の意思で決まります。噂される多くの大手不動産会社がゾンビの如く未だに生き残っているのは政府が潰させることにOKを出さないからであります。つまり、西側基準であればとっくに倒産ですが、違うルールが適用されているので形式上、倒産には至っていないのです。ただ、中途半端な生かし方を続けるとどうなるか、ズバリ申し上げるとその影響は極めて深刻で長く続き、永遠の足かせのようになると申し上げます。
では習近平氏はなぜ倒産承認をしないのかといえばメンツの国故にプライドが許さないのです。もしも噂される大手不動産会社を中国国内法に基づき、倒産させたとしたら私は「習氏、やるねぇ」と申し上げます。彼に度胸があるのかないのか、バンジージャンプのスタート台に立っているようなものです。