ハンガリーのオルバン首相の「平和ミッション」が、大きな話題を作った。まず7月2日にウクライナを訪問して、ゼレンスキー大統領と会談した。不仲が伝えられていた二人だけに、オルバン首相のキーウ初訪問は、好意的に報道されたところもあった。実際には、停戦をもちかけるオルバン首相に対して、ゼレンスキー大統領は冷淡だったのだが、そこは織り込み済みと扱われた。
ところがオルバン首相は、その後にモスクワでプーチン大統領と、さらに北京で習近平国家主席と、極秘訪問の会談を繰り返した。途中でアゼルバイジャンで開かれたチュルク諸国機構(OTS)の非公式首脳会議にも出席し(アゼルバイジャン、カザフスタン、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルコが構成)、ワシントンDCで開催されたNATO首脳会議に出てあらためてOTSの最大国であるトルコのエルドアン大統領と会談をしてから、フロリダでトランプ前大統領と会うという派手な「平和ミッション」であった。
オルバン首相は、各地で歓待を受けた。逆に、ウクライナ、米国、欧州各国の首脳たちは、「激怒」を表現した。EU高官も、ハンガリーが持ち回りでEU議長国を務めているとしても、オルバン首相は決してEUを代表していない、と火消しに必死であった。
このオルバン「平和ミッション」は、何を達成しただろうか。ハンガリー国内の内政から見た分析もありうるだろう。世論調査では、ハンガリーはロシア・ウクライナ戦争をめぐるウクライナの勝利の可能性にかなり悲観的であり、早期の終戦を望んでいる。オルバン首相としては、国民の意に沿った形の「平和ミッション」で、支持の向上につながるはずだ、という読みは、当然あるだろう。
だが国際的な影響を全く度外視して無責任な行動をとった、とだけ断定するのは、いささか偏狭すぎるだろう。少なくともオルバン首相には彼なりの考えがあり、それは効果を持った。以下、大きな国際的な効果を確認してみたい。