オーストリアの首都ウィーンはモーツァルト、シューベルトといった作曲家が活躍した‘音楽の都’として知られているが、同国はフロイト、アドラー、フランクルという3人の世界的な精神科医を輩出している。3人の精神科医はいずれもユダヤ人であり、精神分析学、心理療法を確立していったパイオニアだ。
オーストリア国営放送(ORF)は4日夜、文化番組でジークムント・フロイト(1856~1939年)、アルフレット・アドラー(1870~1937年)、ヴィクトール・フランクル(1905~1997年)の3人の精神科医を紹介する30分余りの短い番組を放映した。3人に共通しているのはオーストリアに住んでいたユダヤ人ということだ。
フロイトは生前、毎水曜日、精神科医の集いを開いていたが、ある日、新しいゲストが入ってきた。カール・グスタフ・ユング(1875~1961年)だ。ユングはユダヤ人ではなく、スイス人生まれの精神科医であることを知ったフロイトは喜んだという。なぜならば、当時、精神科医といえば“ユダヤ人の学問”と受け取られるほど、ユダヤ系学者が多数を占めていたからだ。
ここで3人の精神分析学の業績を紹介するつもりはない。それらは既に知られていることで、世界には数多くの専門家が語りつくしているからだ。ここではアカデミックの世界では余り知られていない話を拾って紹介したい。
3人の精神分析学者の中でもフロイトは文字通り精神分析学の創設者だ。彼は「無意識の世界」を分析し、夢の分析で知られている。患者をソファーに寝かせ、話を聞きながら患者の過去を分析していく。フロイトは骨や細胞ではなく、精神(魂)に刻み込まれた過去、無意識の世界を解析していった。それゆえに、フロイトは「魂の考古学者」と呼ばれたほどだ。