すべての納税者が確定申告する時代は訪れるのか―。給与所得者の年末調整を将来的に廃止し、自営業者らと同様に確定申告してもらう案が先月の自民党総裁選で突如浮上。デジタルトランスフォーメーション(DX)によって納税者自身がスマートフォン上の簡単な確認だけで確定申告を済ませ、勤務先の事務負担を減らすアイデアだったが、実現のハードルは高い。

 給与所得者は毎月の給与から概算の所得税額を天引きする源泉徴収制度が適用され、概算額との過不足を勤め先が年末に調整する。国税庁によると、民間企業に勤務する給与所得者のうち、2023年に年末調整を行ったのは4635万人と約9割を占めた。複数の雇用主から給与を受け取っている人や自営業者らは確定申告で納税する。

 確定申告は現在、すべてオンラインで済ませられる。国税庁は昨年、納税手続きのDXの方向性を示した「税務行政の将来像」を改定。給与情報などのデータを自動的に取り込み、数回の操作で申告が完了する「日本版記入済み申告書」を実現すると明記した。

 納税のDXは海外でも進んでいる。政府税制調査会の調査報告によると、米国では原則として全員に確定申告が求められ、電子申告する個人は90%(21年)に上る。源泉徴収と年末調整に相当する仕組みが基本の英国も、DXを強力に推し進めて源泉徴収で処理できる範囲を広げ、将来的に個人の確定申告を不要とする方針。

 日本の納税DXは「あくまでも現行制度の利便性を上げるもの」(国税庁担当者)で、源泉徴収や年末調整の廃止を視野に入れていない。もし、国民皆「確定申告」に切り替えようとすれば、給与所得者は手間が増えると受け止める恐れがあるほか、「申告を受理する人員を増やす必要がある」(財務省担当者)。ある税務署の幹部は「前提になる制度が整った上での話だ」と、早期実現に懐疑的だ。(了)

提供元・Business Journal

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