さらに追い風となるデータもある。これまで鹿島は、初代監督の宮本征勝氏をはじめ、関塚隆氏(暫定監督)、石井正忠氏、大岩剛氏、相馬直樹氏、岩政大樹氏の6人の日本人が監督を務めているが、最も好成績を収めたのは(初代の宮本氏と暫定の関塚氏を除けば)、選手としての実績面で乏しい石井氏である点だ。

Jリーグが創設された1993シーズンの開幕戦、名古屋グランパスエイト戦(カシマサッカースタジアム/5-0で勝利)の先発メンバーに名を連ねたものの、代表歴もなかった石井氏。指導者に転身後はユースチームのコーチからフィジカルコーチ、総合コーチとして様々な経験を積み、2015年7月、トニーニョ・セレーゾ監督の解任に伴い、後任として鹿島の監督に就任した。

そのわずか3か月後、ヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝(埼玉スタジアム2002)で、ガンバ大阪を3-0で一蹴し初タイトルを獲得すると、2016シーズンにはJ1リーグと天皇杯も制し、12月18日に行われたFIFAクラブワールドカップ決勝のレアル・マドリード戦(日産スタジアム)では、MF柴崎岳の2得点で延長戦に持ち込むなど(2-4で敗戦)、“あわや”の試合を見せ、Jリーグファンに夢と希望を与えた。

退任後は、大宮アルディージャでも指揮を執ったものの、浪人中には鹿嶋市内の給食センターで働いていたという庶民派でもある石井氏。その手腕を買われ、タイ・リーグ1の2チーム(サムットプラーカーン・シティ、ブリーラム・ユナイテッド)の監督を経て、現在、タイ代表監督を務めている。

鹿島の主力でありながら、A代表とは縁遠かった点や、他クラブで引退した点(石井氏はアビスパ福岡で引退)など、共通点も多い中後氏と石井氏。エリートコースを歩むことがなかったことで、選手へのリスペストを忘れず、指導方針も180度変わる可能性を秘めている。


鹿島アントラーズのサポーター 写真:Getty Images

来季以降の鹿島を占う初陣に注目