ヨーロッパ5大リーグの1つセリエAを擁するイタリアでは、サッカーは単にスポーツではなく国をも象徴する文化として存在する。時に人々のサッカー愛は、選手だけでなくスタジアムグルメを提供するシェフたちにも向けられている。
2024年6月にイタリアのミラノで『パニナリ・ユニフォーム』というユニークな企画が実施された。これはイタリアのデザイン制作会社『DUDE』プロデュースのもと、大手食品・飲料ブランド『ハインツ』とイタリアを代表するスポーツブランド『Kappa』の3社がタッグを組み、スタジアムの屋台(パニナリ)で働くシェフたちに向けて、まるでサッカークラブのような公式ユニフォームを開発・制作するというもの。
この記事では、スタジアムの屋台シェフに注目した同プロジェクトと、その仕掛け人である『DUDE』の制作チームメンバーに訊いた企画背景を紹介していく。
観客の胃袋を支えるヒーローたち
実は『パニナリ・ユニフォーム』実施の背景には、昨年末に行われた『ハインツ』との別企画『スタジアム・ヒーローズ』の存在があった。それは、ACミランとインテル・ミラノのホームスタジアム『スタジオ・ジュゼッペ・メアッツァ(愛称:サン・シーロ)』の傍で、毎週日曜日にパニーニやサンドウィッチなどを提供している屋台(パニナリ)で働くシェフ達をサン・シーロへ招待し、大勢のサポーターと共に彼らを称えるというサプライズ企画。
世界でもトップクラスの試合が行われるサン・シーロには試合毎に数万人のサポーターが訪れ、言うまでもなくシェフ達は大忙しだ。そのため、彼らはスタジアムのすぐ近くで長年勤務しているにもかからわず「今まで一度もサン・シーロに入ったことがない」「幼い頃にスタジアムに入ったきり」という状態だった。