世界各地の空で響く謎の衝撃音とは――。科学者たちはその奇妙な音の原因と起源をまだ解明できていないのだ。

■音源が不明、謎の「空鳴り」とは?

 現在、世界のいくつかの場所で軍事的な戦闘が行われているが、戦場でもない場所で突然“パーン”という砲撃音や銃撃音、あるいは打ち上げ花火の音を聞いたら何事かと驚くだろう。しかし、日本を含め世界中でそうした原因不明の衝撃音が少なくとも200年以上前から報告されている。読者の中にも耳にしたことがあるという人もいるかもしれない。

「Skyquakes」と呼ばれるそのサウンドは意訳すれば「空の震動」であるが、日本語訳では「海鳴り」とも訳されている。しかし音の発生源は海ではなく空ということなので「空鳴り」というのが相応しいようにも思える。

 科学者たちはこの「空鳴り」がどこから来ているのか解明しようと躍起になっているが、これまでにも大気圏での隕石の爆発、軍事演習、採石場の爆発、遠くの嵐や地震などの仮説が浮上している。

発生源不明…世界中で鳴り響く謎の衝撃音「空鳴り」の正体とは!?科学者たちも解明できず
(画像=画像は「Unsplash」より,『TOCANA』より 引用)

「空鳴り」の最も古い記録は1811年に米ミズーリ州ニューマドリッドの人々がマグニチュード7.2の地震の際に奇妙な音を聞いたことが報告されている。地元住民は地震発生前と発生中に「大砲のような音」を聞いたと証言している。

 2020年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のチームは「アーススコープ可搬型アレイ(ESTA)」の地震データを使い、全米の騒音の原因を解明しようと試み、2013年以降の騒音に関する報告と比較した。

 研究チームはESTAから取得した地震音響データと地震の記録を検証したが、地震との関係性は見いだせなかったことから、地震が原因ではない可能性が高いという証拠が得られた。「空鳴り」は地殻活動に関係したものではなく、大気現象であることが示唆されることになった。

 とはいえ「空鳴り」は依然として今も謎に包まれており、未知の自然現象である可能性もあるがそうではない可能性もある。

 音速を超える航空機のソニックブームによる大音響が遠くまで伝わっている可能性や、特定の方向に増幅された嵐や津波の音、メタンハイドレート層から放出されたメタンガスの発火音や地磁気嵐の音などの説もある。

 有望な可能性の1つは、地球に落下する隕石や流星が大気中で音速を超えてソニックブームを発生させている可能性であるが、実際に検証が試みられたことはない。

 ちなみに入眠時や夜中に目が覚めたときに、頭の中で突然大きな音を感じる「頭内爆発音症候群」という症例があるが、これが「空鳴り」に関係しているとは考え難い。

 世界の空で鳴り響く「空鳴り」の謎の解明はどうやらあまり期待できそうにはないが、地道に研究が続けられていくことを望みたい。

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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