1930年代、ある写真家が「畑に侵略してきた巨大バッタ」の撮影に成功した。蝗害は現代でも大きな問題となっているが、この時捕獲されたバッタのサイズは人間なみ。脚力なども優れていたのだろう、成人男性数人がかりでないと到底抑えられないようだ。古代は昆虫のサイズが大きかったというが、20世紀も前半であればこのような巨大な昆虫がまだ生き残っていたようだ……というのは勿論嘘で、この画像は当然ながら巧妙に造られたフェイク画像だ。
1935年、カンザス州ガーデン・シティの町にバッタの大群が押し寄せたとき、地元の写真家のフランク・D・”ポップ”・コナードは一攫千金のアイデアを思いついた。彼はカメラを手に複数の素材となる写真を撮り、写真家としての技術を駆使してバッタの画像を重ね合わせ、あたかも巨大な昆虫を捕獲しているような写真を何枚も作成したのである。ある写真ではライフルを持った猟師が巨大なバッタを手にし、また別の写真では野原でバッタを捕まえようとする人々の姿が捉えられている。
現代では画像編集ソフトで様々な画像を組み合わせて巧妙なフェイク写真を簡単に作ることができる。またAI生成でも一見しただけでは偽物と解らない、架空の光景を捉えた写真を生み出すことができる。しかしこの画像が作成された1930年代当時では、精巧な合成画像を作るのは至難の業だった。
当然ながら彼の写真は大きな注目を集め、絵葉書として人気を博したことでコナード氏は大金と評判を得るに至った。しかし、彼自身にも予想出来ていなかったのは、多くの人々が彼の合成写真を見て「巨大バッタが実際に存在する」と信じてしまったことだった。当時は写真の合成も限られた人による技術だったし、昔から「写真は嘘をつかない」と言われるだけに、信じてしまった人々も多かったのかもしれない。
巨大バッタ「ホッパー・ホッパー」の絵葉書は何年も売れ続け、コナード氏は63歳で引退するまで印刷を続けていた。この事実から、「ホッパー・ホッパー」 は市場で最も売れたノベルティ・カードだとも言われている。
文=田中尚(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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