しかしその後も、浦和の過激派サポーターは反省することなく、日本サッカー界に残る大事件を引き起こす。2023年8月2日にCSアセット港サッカー場(愛知県名古屋市)で行われた天皇杯4回戦の名古屋グランパス戦において0-3で敗れた直後に、約100人ものサポーターがピッチになだれ込み、名古屋側サポーターエリアやスタジアムの立ち入り禁止エリアにも乱入し、愛知県警が出動する事態になった。

それでもこの件に下された処分は、「浦和レッズの翌年の天皇杯出場不可」というもの。当のサポーター集団への処分は「数試合の入場禁止処分と厳重注意」のみ。これには、他クラブのサポーターのみならず、身内の良識ある浦和ファンからも「甘すぎる」との声が上がった。

鹿島アントラーズのサポーター 写真:Getty Images

Jリーグが掲げたスローガンが危機

欧州もJリーグも、それぞれ暴力行為や差別に対する意識とそれに対するルールも異なるため一概には言えないが、今回アトレティコが受けた処分は、洋の東西を問わずゴール裏に巣食う“腐ったミカン”を排除するという目的のためには効果的な方法ではないだろうか。

浦和だけを例に挙げたが、Jリーグの歴史も30年を超え、特に歴史のある「オリジナル10」と呼ばれるクラブの中には、「固定化・過激化・高年齢化」しているサポーターグループが存在する。その代表的な例が鹿島アントラーズのサポーターズグループ「インファイト」だ。

“サッカー不毛の地”だった鹿嶋市周辺にサポーター文化を根付かせた彼らの功績は大きいが、鹿島が常勝軍団になるにつれその行動もエスカレートし、相手サポーターとの衝突や、女性や子どもファンへの威嚇行為、果ては2004年10月23日の浦和戦(カシマサッカースタジアム、2-3で浦和勝利)後、空き缶をピッチに投げ入れ、それをスタンドに投げ返したMF本田泰人に襲い掛かるなど、様々な狼藉を働き、一般的な鹿島ファンからも「ゴール裏は無法地帯」と敬遠されている。