アトレティコサポーターによる、こうした狼藉は1度や2度ではない。その度に罰金処分などが下されるが、とても効果的な処分といえないのが実情だ。
特にアトレティコの場合、かつて存在したファシスト政党であるファランヘ党を起源とし、そのリーダーだったフレンテ・デ・フベントゥデスの名を借りた「フレンテ・アトレティコ」なる過激派サポーター集団が存在している。彼らは傷害事件にとどまらず、殺人事件まで引き起こしたことで、クラブ側は2014年、“表向き”には完全追放を表明したが、2017年に本拠地をエスタディオ・ビセンテ・カルデロンからエスタディオ・メトロポリターノ(現名称は「シビタス・メトロポリターノ」)に移転した現在でも、南側スタンドを占拠していることは公然の秘密だ。
サポーターへの直接的な処分が有効か
今回の処分で注目されるのが「ホームゲーム3試合でのゴール裏席封鎖」という、過激サポーターに対する直接的な処分が加わった点だ。
「スタジアムの部分閉鎖」という処分自体は以前から行われていたが、効果のないクラブへの「罰金処分」や「勝ち点剥奪」や、良識あるファンをも巻き添えにする「無観客試合」よりも効果的だと感じる。特にスペインでは人種差別的なチャントが横行し、レアルのFWヴィニシウス・ジュニオールに対するそれは、社会問題にまで発展した。
2014年3月23日、浦和レッズのホームゲーム、J1第4節清水エスパルス戦(埼玉スタジアム)がJリーグ初の無観客試合となったのも、同年3月8日に開催されたサガン鳥栖戦において、浦和のサポーター集団「URAWA BOYS」のメンバーの男性3人が、スタジアムのコンコースに「JAPANESE ONLY(日本人以外お断り)」と書かれた差別的な横断幕を掲出したことが原因だった。指定席を前売りで買っていた筆者も、大迷惑を被った1人だ。