家電や電子機器製造事業を縮小させる中、「午前は工場で働いて、午後から練習」といった実業団チームにおける選手の働き方のモデルも根底から崩れつつある。

その傾向は、サッカーに限った話ではない。社会人野球界では、それが顕著に表れている。社会人野球の最高峰の大会は、戦前からの歴史がある「都市対抗野球大会」だが、予選に参加した企業チームは1978年に179あったものの、2021年には97にまで減少している。その間、バブル崩壊などで廃部に追い込まれたチームは枚挙に暇がない。

今回、解散するソニー仙台や、Honda FCは、こうしたチーム運営をモデルとしている。よって、ネットで多く聞かれた「時代の流れ」といった声も“むべなるかな”といえよう。

日本サッカー協会 写真:Getty Images

地域密着型クラブが抱える経営上の課題

今回のソニー仙台の解散の報は、地域密着型クラブが抱える経営上の課題も浮き彫りにした。スポンサーや経済基盤が弱いクラブにとって、安定した運営は非常に難しく、ソニーのような世界的大企業の支援を受けても長期的な存続が難しいことが明らかにされたのだ。

他のアマチュアクラブにとっても、経営基盤をどう強化するか、地域社会とどのように持続的な関係を築くかが、今後の大きな課題となる。それが不可能と分かった時点で、ソニー仙台と同じ決断を下すクラブが出てきても不思議ではない。

また、JFL全体にとって、ソニー仙台の退会はリーグレベルや魅力に影響を与えるだろう。長い歴史を持ち、2015シーズンにはJFL優勝も果たし、Jリーグ入りを目指すクラブにとって“門番”と呼ばれたクラブが解散することは、リーグにとっても悪影響しかない。

この“事件”を契機に、JFLや地域リーグ全体でのクラブ運営モデルの見直しが促される可能性もある。企業に頼ったクラブ運営だけではなく、地域コミュニティーが主体となってクラブを支えるモデルや、ファンとの協力による持続可能な運営方法の模索が進むだろう。