銀行等の金融機関は、投資において、流動性を高く維持する、即ち、取引費用を小さくしようとする。リスク管理によって、投資対象の諸属性について基準値を設けているので、環境に応じて諸属性が変化するとき、基準値への抵触が生じて、その都度、保有資産の売買の必要性が生じるからである。

また、投資対象の価格が下落するときは、資本規制のもとで、評価損が資本の控除項目になるために、保有できる資産のリスク総量が減少し、一部の資産の売却が必要になることも重要である。つまり、資産価格の下落により、強制的な資産売却が誘発され得るので、保有する資産には、高い流動性が要求されざるを得ないわけである。

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この資本制約の構造問題は世界共通だから、全世界の多数の金融機関が一斉に資産売却をすることになりかねず、そのことに起因する市場への大きな影響は、更なる価格の下落を誘発し、それが更なる売却を誘発するという連鎖を招き得る。これがプロシクリカリティと呼ばれる現象であるが、銀行等の金融機関のような制約を受けない投資家にとっては、こうした状況は、著しく安い価格での資産取得を可能にするものとして、非常に有利な投資機会を提供する。

そもそも、流動性は、本来は、運用資産に資金使途が生じたときに、換価のための売却が生じるからこそ、必要なのである。故に、資金使途が具体化している資金を運用するときは、当然のことながら、現金化が常に意識されなければならないのだが、財団、年金基金等の機関投資家においては、運用資産そのものに使途があるわけではなく、投資の果実だけが払い出されるのだから、換価の可能性としての流動性は重要ではないはずである。

低い流動性を許容できる投資家は、高い流動性を求める投資家が存在する限り、割安なものに投資できる。例えば、銀行等の資本規制のもとでは、金融機関が規制に準拠するための費用を支払い、資本規制のない一般投資家が利益を得るという基本構図が成立するわけである。